第五百一話 コンサート会場でその八
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「今もな」
「というか今紅麗さんはご自身がそうだと思われていますか?」
「いや」
クローディアのその問いに首を横に振った、そのうえでの言葉だった。
「全くな」
「左様ですね」
「何かとあったがこうして生きてられてだ」
そうしてというのだ。
「母上それに麗の者達とも一緒だからな」
「だからですね」
「今の私は不運とは思わない」
こう言うのだった。
「全くな」
「そうです、まことに運がない人はです」
「命を落とすな」
「そうなりますので」
「だからだな」
「紅麗さんはです」
「これまでも最低限の運が備わっていた、そして今は」
自分からさらに言った。
「運があるな」
「そうかと」
「そういうことだな」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「悲嘆されることなくです」
「生きていけばいいな」
「そう思います」
「そうだな、私は生きてきたし生きてきてだ」
クローディアのその言葉を受けて述べた。
「仲間達もいる」
「それならですね」
「不運と思わないことだな」
「そうかと」
「少なくともこの男よりは遥かに運がいい」
当麻を見てこうも言った。
「そしてこの男も生きているしな」
「ええ、何とかですけれどね」
当麻は紅麗に憮然として応えた。
「本当に」
「僕もです。いつも満身創痍でぎりぎりで生きてますけれど」
明久も言ってきた。
「そう思うと最低限の運はありますね」
「そうだな、ならそのことに感謝してな」
「生きていくことですね」
「それがいい」
「俺なんか相当に運いいな」
佐野は彼等のやり取りを見て思った。
「社長で金あるし経営も上手くいっていて奇麗な奥さんもいるしな」
「佐野さんはかなり運がいいかと」
箒が見てもだった。
「やはり」
「そうだよな」
「ペットの小鳥も元気ですね」
「ああ、長生きしてくれてるよ」
箒に笑顔で答えた。
「ずっとな」
「それなら尚更ですね」
「俺は運がいいな」
「そうですね」
「ああ、心から思うよ」
「本当に運がないと簡単なことで死ぬな」
パイマンは腕を組み真剣な顔で述べた。
「吾輩もそう思うである」
「ああ、いきなりな」
幸平が応えた。
「そう思うと俺も運がいいか」
「お前は何か無理に運を切り開いてるな」
「そうか?」
「そんな感じである」
「運なぞ自分で掴み取るものだ」
ベートーベンの考えはそうであった。
「俺は自分で運いや運命をものとしよう」
「それで他の人は?」
「知ったことか」
モーツァルトの問いに腕を組んで答えた。
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