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俺様勇者と武闘家日記
第2部
スー
テンタクルスとの戦い
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本当に良かった!」
「……相変わらずだな、お前は」
 固かった表情が、僅かに和らぐ。
 初めて彼の役に立てた。その達成感が、何よりも心地よかった。当然笑みも浮かぶだろう。
 そんな私の事情など知るよしもなく、ユウリは私のぎこちない返事に苦笑したのだった。



「ルカ、大丈夫?」
 ユウリと別れたあと、甲板の端でぼんやりと海を眺めているルカを見つけた私は、努めて明るく声をかけた。
 私の声に反応したルカは、ゆっくりと顔をこちらに向ける。その様子は憔悴しきっていた。
 無理もない。旅に出て一月も経っていないのに、いきなり未開の地で何日も野宿するわ、アープの塔で延々と魔物と戦うわ、しまいにはレベル三十を越えたユウリでも倒せないテンタクルスに襲われるわで、十一歳の子供には過ぎるくらい過酷な目に遭ってきたのだ。それでも泣き言や文句を言わずここまでついてこれた弟には正直驚かされる。
「ルカ……。ドリスさんのところに戻る?」
 私が問うと、ルカはぶんぶんと首を振る。
「それはおれが決めたことだから、勝手に戻るなんて出来ないよ」
「あれ? それってドリスさんが決めたんじゃないの?」
 私がドリスさんの私物をなくしてしまった代わりに、彼女がルカを私たちと同行させるよう提案したのだ。そのときはルカも驚いていたようだったけれど……。
「実はアネキたちに会う前に、師匠に一度頼み込んだんだ。商人の修行のために、一人で旅に出たいって。でも、師匠は反対した。おれがまだ大人じゃないからって。だからあのとき、おれの願いを覚えててくれてたことに驚いたんだ」
 あのとき意外な表情をしていたのは、そう言う理由だったからなんだ。
「でもまさか、アネキと一緒に旅に出るなんて思いもしなかったけどな」
 それは私もそう思う。この広い世界で、離れていた姉弟が一緒に旅をするなんて、一体誰が予想しただろうか。
「そもそもせっかく師匠がくれたチャンスを、ここで終わりにするわけにはいかないよ。おれもこの広い世界に一人で旅することがどれだけ大変か、何もわかってなかった。もしあのとき一人で旅に出ることを許してくれていたら、おれはこの世にいなかったよ。今ここでアネキやユウリさんに色々学ばせてもらってるのは、すごく運が良いことだと思ってる。だから、どんな辛い目に遭っても逃げないで、その幸運に感謝しなければならないんだ」
 ここで私の名前も出していることに、嬉しさを感じていた。ルカはいつになく真剣な面持ちで、私を見据える。
「ありがとう、アネキ。一緒に旅が出来て、嬉しいよ」
 いつになく素直なルカに、私は一瞬言葉に詰まった。
 私より背の低かったルカは、しばらく見ない間に随分と背が伸びた。それだけではない。自由奔放だった弟は、商人になるという自分の夢を叶えるため、自ら成長し
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