第二十七章 白と黒
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え化け物になってたから、苦戦は仕方ねえのかな。……でも、次に会ったら絶対にぶっ倒すけどな」
地面にあぐらかいたまま、ぽきぱき指を鳴らした。
「でも、ほんまのところ、さっきのあの子が現れんかったら、うちら危なかったのう」
治奈のいうさっきのあの子とは、白服を着たブロンド髪に幼な顔の少女のこと。
アサキたちが至垂一人に苦戦していた時、ふらり現れて助けてくれた。
至垂を、一撃の元に吹き飛ばしたのだ。
そこだけを取って味方といえるかは、分からないが。
姿を見るなり襲い掛かった至垂を、撃退しただけともいえるからだ。
「そうだね。あの女の子は、なんだったんだろうね」
アサキは、真っ黒な空を見上げ、考える。
でも、目で見た事実以上のことは、想像すら出来なかった。
「魔道着は、着てなかったよな。あのふわっふわっした服が、新型とかでない限り。……じゃあ、この研究所での実験体なんじゃねえの?」
「この研究所とは?」
治奈が問う。
「いや、そうかは分かんねえけどさ。ここ実はリヒトの研究所なんじゃねえの、って話を、さっきしてたじゃんか」
「さっきから、カズミちゃんとアサキちゃんだけのやりとりを、さも当然のこととして話されても困るわ。……味方をしてくれたのじゃから、まあ少なくとも敵ではない、ということじゃろ」
「いや、敵の敵というだけかも知れねえだろ。……なんか焦点定まってない、アサキよりガキくせえ顔のくせして、妙に落ち着いた笑みを浮かべててさ。いずれにせよ、マトモじゃない気がするね、あたしは」
「でもさ……」
アサキが会話に割り込んだ。
ガキくさい、などといわれたにもかかわらず、口元は嬉しそうに、少し緩んでいる。
「なにがなんだか、まださっぱり分からない。けれど、わたしたち三人が、こうして揃ってさ……なんとか、なる気がしてきたね」
ふふっと笑った。
「はあ?」
カズミはあぐらをかいたまま、唖然とした表情になった。
でもすぐに、笑みに変わっていた。
笑みといっても、苦笑であるが。
地に手を付いて、ようやく腰を上げると、アサキへと右の拳を突き出した。
真っ直ぐ、ゆっくりと。
アサキも、腕を伸ばす。
こつん
二人の拳が触れて、ぴたと密着した。
治奈も横から腕を伸ばして、自分の拳をくっつけた。
三人は、腕を伸ばしたまま、拳で触れながら見つめ合った。
それぞれの顔に、笑みが浮かんでいた。
揺らぎのない、信頼に満ちた、笑みが。
ちょっと、照れくさそうに。
でも、心地よさそうに。
だけど……
その表情は、僅か数秒しかもたなかった。
険しい表情へと変わっていた。
三人の顔が一斉に、
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