第一章
[2]次話
コクワと葡萄
アイヌに伝わる古い話である。
世界を創造してすぐのこと人間達のカムイであるオイナカムイは天界で言った。
「この世界そして人間達も造ったのだ」
「だからか」
「それでか」
「一度地上に降りてだ」
若く整った顔で言う、黒髪は長く波立ち精悍な眉を持っている。長身で痩せたすらりとした身体を持っている。
「そしてだ」
「そのうえでだな」
「地上の様子を見たいか」
「我等が造ったそれを」
「そしてだ、私は人間のカムイだ」
それを司る神だからだというのだ。
「人間に知恵を授けることもだ」
「したいか」
「そうなのか」
「そう考えているのか」
「そうだ、だからだ」
それ故にというのだ。
「今から地上に降りてくる」
「わかった、ではな」
「地上を見て来てくれ」
「そして人間に知恵を授けてくれ」
「そうしてくれ」
「そうしてくる」
オイナカムイは他のカムイ達に笑顔で言ってだった。
すぐに従者達を連れて地上に降りた、するとだった。
自分達が作った地上は草木が豊かで山も川も美しく見事なものだった。様々な生きもの達で満ちていてオイナカムイが造った人間達も幸せに過ごしていた。
多くの木のみも実っている、だが。
ここでオイナカムイは気付いたことがあった、それは何かというと、
「忘れていたぞ」
「どうしたのですか?」
「忘れていたとは」
「何かあったのですか」
「コクワと葡萄がない」
地上にはとだ、オイナカムイは従者達に話した。
「その二つがな」
「そういえば」
「確かにそうですね」
「様々な木の実がありますが」
「豊かに実っていますが」
「コクワと葡萄はありません」
「その二つだけはな」
オイナカムイは整った逞しいその眉を曇らせて話した。
「ないな」
「左様ですね」
「ではですか」
「その二つもですか」
「地上にもたらしますか」
「そこでだ」
オイナカムイはさらに話した。
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