第三章
[8]前話
「クルティウス殿は戦う姿で割れ目に入られたな」
「はい、そうされました」
「まさに今しがた」
「そうされました」
「これこそがローマで最も貴重な宝だと」
「そう言われて」
「この街はロムルスとレムスにはじめられた」
老人はローマのはじまりから話した。
「そして守護神はマルスだ」
「戦いの神です」
「まさにそれです」
「このローマの神は」
「戦いこそがだ」
老人はさらに話した。
「ローマでは尊い、敵がいれば戦う」
「我等自身が」
「自ら武具に身を包み」
「馬にも乗り戦う」
「そうすることがですね」
「最も尊い、だからクルティウス殿は武装して馬に乗って割れ目に入り」
そうしてというのだ。
「そのうえでだ」
「マルスの木である無花果が出て来たのですね」
「戦いの神の木が」
「それが素晴らしいものであるなら」
「そうであるならですね」
「我等は敵が出れば戦いだ」
マルスの様にというのだ。
「勝つ、それこそがだ」
「最も尊い」
「そういうことですね」
「ではですね」
「これよりもですね」
「敵に戦い勝つのだ、ローマはな」
老人は皆に言い誰もが頷いた、こうしてだった。
ローマは敵が出れば誰もが武具に身を包み戦い勝っていった、そうしてだった。
遂に広大な領土と多くの民を持つまでになった、そこで元老院からアウグストゥスの称号を得たオクタヴィアヌスは。
その無花果の木から採れた実を食べつつローマの者達に話した。
「これからもこの無花果に誓いだ」
「はい、ローマはですね」
「敵が出ればですね」
「戦う、そして勝つのだ」
無花果を見せつつ高らかに話した。
「武具に身を包んでだ、いいな」
「ローマの者として」
「そうしていきます」
誰もがそのことを誓った、ローマの者達は割れ目の後に出て来た無花果の木になった実を見つつオクタヴィアヌスに応えた、そうして帝国となってからも戦っていきマルスの歴史を世界史に残したのだった。クルティウスのことも思いつつ。
クルティウス 完
2022・3・13
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