第二章
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「数里、僧院から見て二十里になりますね」
「それ位でか」
「行けますので」
「わかった、ではな」
「それで帰るともう夕刻の深くですが」
「屋敷に帰るのは夜になるな」
史論はここまで聞いて述べた。
「そうなるな」
「それでも宜しいですか」
「狩りをしていては時々ある」
夜に帰ることもというのだ。
「だからな」
「そのことは問題ないですか」
「家のことはわかっているからな」
それでというのだ。
「そのことは気にしなくていい」
「それでは」
僧も頷いてだった。
史論と供の者達は僧の案内でさらに進んでいった、すると案内された谷の先にだった。
数百本の二尺か三尺の桃の木が並んでいてどの木にもあの大きな桃が枝がしならんばかりに実っていた、史論はその桃の実達を見てだった。
僧のまずは食べましょうという言葉を受けてだった、そのうえで。
供の者達と共に桃をふんだんに食べた、僧もそうしてだった。
食べ終わった後で桃の実をそれぞれ持てるだけ持って帰ろうとしたがそれは僧が止めた。
「二つか三つにしましょう」
「それだけでいいか」
「もう充分召し上がられましたね」
桃の実、それをというのだ。
「そうされましたね」
「確かにな」
「それではです」
「多く持って帰ることはか」
「慎みましょう、この桃は特別な桃で」
それでというのだ。
「ここはおそらく霊境です」
「普通の場ではないか」
「はい、ですから」
「そうした場所のものを多く持って帰るとか」
「只でさえたらふく召し上がっていますし」
このこともあってというのだ。
「欲を張らず」
「少しだけ持って帰るべきか」
「それがいいかと」
「そうだな、欲を張り過ぎていいことはない」
史論は僧のその言葉に頷いた。
「普通の場にないものを多く持ち帰ることもな」
「その場にいる神の怒りを買いましょう」
「これもよくないな」
「ですから」
それ故にというのだ。
「そうしましょう」
「わかった、ではな」
史論も供の者達も頷いた、そうして彼等は桃は少しだけ持って帰って夜に家に帰るとその桃を家の者達と共に食べた、すると家の者達は長く生きることが出来た。
後にこの話を安禄山という者が聞いた、彼は貪欲な者でそれでだった。
家臣の者達にその桃を持って帰られるだけ持ってこさせしかも一人でその桃を全て食べた、するとだった。
急に目が悪くなった、この話を聞いて世の者達は口々に噂した。
「あれだけいつも飲み食いしてだ」
「しかも霊境の桃を一人で貪り喰らうからだ」
「霊境の神の怒りを買ったのだ」
「だから目が悪くなったのだ」
これこそが霊境の神の祟りだと話した、そしてだった。
安禄山はやがて乱を起こしその中で
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