第一章
[2]次話
矢の一念
李広の軍略はよく知られていた。
匈奴相手にも臆することなく見事に戦い武勲を挙げていた。
「李広様は凄いな」
「全くだ」
「あの匈奴相手に見事に戦われる」
「兵達にも慕われているしな」
「まさに天下の名将だ」
「近頃衛青様が活躍しておられるが」
皇帝、後に武帝と廟号が定められた彼が見出した者である。その姉は皇后になっており権勢もかなりのものになっている。
「しかし李広様もだ」
「あの方の果敢な采配ときたらな」
「最早漢の宝だ」
「これまでどれだけの匈奴の軍勢を破ってきたか」
「しかも弓矢のお見事なこと」
「まさに天下の弓の名手だ」
その弓の腕のことも話された。
「弓でもあの方は随一だ」
「狙いは決して外されない」
「しかもどの様なものも射抜かれる」
「素晴らしい方だ」
「あれだけの方はそうそうおられない」
「優れた将で見事な弓の使い手」
「天下の英傑と呼ぶに相応しい」
「全く以てな」
彼の下にいる兵達がこう話した、そしてだった。
彼を押し退ける様にして軍においてその地位を上昇させている衛青も家の者達に経達の李広についての話を聞いてこう話した。大柄で武人らしい身体つきだが穏やかな顔立ちで短い髭は逞しさよりも優しさがある。
「その通り、李将軍は天下の英稀だ」
「旦那様よりもですか」
「李将軍は英傑ですか」
「匈奴を大いに倒しておられる旦那様よりも」
「そうなのですか」
「私なぞ運がいいだけだ」
こう言うのだった。
「ただそれだけの者でだ」
「李将軍は違い」
「天下の英傑であられ」
「采配もお見事で」
「勇敢であられるのですか」
「どちらも私なぞ足下にも及ばぬ」
衛青の話は変わらなかった。
「とてもな、特に弓はな」
「弓ですか」
「李将軍の弓は有名ですが」
「それについてもですか」
「馬に乗られて駆けられてだ」
そのうえでというのだ。
「弓矢を操られるが」
「狙いは外さない」
「それに射抜けるものはない」
「そうなのですね」
「匈奴の者でもあそこまでは出来ぬ」
馬に乗ったうえで弓矢を自在に使う彼等でもというのだ。
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