第四章
[8]前話
「天下はまた一つになるという」
「そしてその中で」
「わしはどうもな」
「そうですか」
「わしのことは書いてなかったが」
「その天下が乱れる中で、ですか」
「倒れるであろう、寺の老僧殿に紹介されて星見の方にわしの星を見てもらったが」
そうしてもらってというのだ。
「わしは戦の中で倒れるとあった」
「やはりそうですか」
「わしは討幕をして帝の為に戦ってな」
「その中で倒れられますか」
「それが運命の様だ、若しわしがここで立たねばな」
さもなければというのだ。
「わしは助かる様だ」
「では」
「いや、それがわしの運命でここで幕府を倒さねばな」
「なりませぬか」
「本庁の主は帝、帝にお仕えするのが筋であるし」
それにと言うのだった。
「今の幕府はもう駄目であろう」
「政に乱れが出ていますな」
「それもかなりな、だからな」
「それで、ですか」
「うむ」
それ故にというのだ。
「天下の為にもな」
「乱れた政を行う幕府を倒し天下がよくなる為に」
「三十年乱れても戻るとあるしな」
それでというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「うむ、わしは立つ」
「わかりました、ではです」
正季は兄に応えた、その覚悟を見たうえで。
「及ばずながらです」
「そなたもか」
「兄上に何処までも」
「わしに何があってもか」
「そうさせて頂きます」
「済まぬな」
「兄弟ですから」
これが正季の返事だった、彼は笑ってさえいた。
「死ぬ時も一緒です」
「そう言ってくれるか、では何処までもな」
「帝にお仕えし」
「戦っていこう」
「それでは」
兄弟で盃を打ち合わせて誓い合った、そうしてだった。
正成と正季は共に戦っていき最後は共に自害した、それは歴史にある通りだ。
だがその裏に彼が未来記を四天王寺当時は天王寺と呼ばれたその寺で読み己の運命を知ったうえでもそうしたことは太平記にあるが真実かはわからない。だが正成は弟と共に戦いそうして死んだことは歴史にも書かれている。そのことは真実である。
未来記 完
2022・1・13
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