第三章
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「それでもか」
「はい、殿こそ我等の主」
「そのことは変わりません」
「代々殿にお仕えしてです」
「殿がどういった方か知っているので」
「そう言ってくれるか、ではな」
正成は彼等に二心がなく自分にあくまでと誓ってくれたことに喜びつつだった。
彼等に礼を述べて共に幕府を倒そうと誓い合った、だが彼等にこうも言った。
「しかしわしに何かあれば」
「その時はですか」
「殿が戦の中で倒れれば」
「一旦逃れてそしてだ」
そのうえでというのだ。
「帝の為に戦い続けて欲しい」
「楠木家にお仕えし」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「戦って欲しい、わしに殉じないでくれ」
彼等にこうも言った、そうしてだった。
彼は討幕の為に兵を挙げることを決めた、しかしその夜にだった。
彼は弟の正季、自分とよく似た姿形だがやや背の高い彼に共に酒を飲む場で神妙な顔になって言われた。
「兄上、昼のお話ですが」
「そなたもおったな」
「兄上は未来記を最後まで読まれたのですな」
「うむ」
その通りだとだ、正成は弟に答えた。二人共手に盃があり肴は干し魚である。
「そうさせてもらった」
「そして兄上に何かあればとです」
「言ったことからか」
「若しやそこに兄上のことも」
「わかったか」
「幕府は倒れるのですな」
「そう書いてあった、帝が流され三百七十日程経ってな」
それからというのだ。
「西鳥が来て東魚を食すとあった」
「幕府は倒されるのですな」
「間違いなくな、だが天下が収まるのは三年とあった」
「その後は」
「?猴、猿の様な者が出てな」
そうしてというのだ。
「天下を掠め三十年とあった」
「三十年ですか」
「そしてその大凶が変じてな」
そのうえでというのだ。
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