第二章
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「お願い出来ますか」
「あの書のことは表に出せません」
「そうなのですか」
「非常に大事なことが書かれているので」
その為にというのだ。
「そうそうは。しかし貴方様がそう言われるなら」
「それがしがその大きな将星の者であるので」
「おそらくあの書を読み」
そうしてというのだ。
「これからのことに役立てるのでしょう」
「では」
「こちらに」
老僧は彼を寺のある一室に案内した、そこは寺の奥の奥であった。そこに案内してそのうえでだった。
金軸の一巻があった、正成はその巻きものを受け取り読んでいった。その後で屋敷で彼に代々古くから伝える者に話した。
「九十五代で天下一度乱れるとあった」
「九十五代ですか」
「それでですか」
「天下は乱れるのですか」
「人王九十五代、これは帝のことであろう」
後醍醐帝だというのだ。
「あの方だ、そしてな」
「そしてですか」
「さらに書かれていますか」
「東魚が来て四海を呑むとあった」
その様に書かれていたというのだ。
「そうもな、東魚は幕府か」
「鎌倉は東にありますし」
「それで、ですか」
「東魚ですか」
「そうであろう、そして日は西天に没するとある」
こうもあったというのだ。
「日は帝、西天に没するとは流されるのか」
「何処かの島に」
「本朝の西の」
「そこにですか」
「そしてな」
それにというのだ。
「西鳥が来て東魚を食すとあった」
「ではそれは」
「殿ですか」
「その西鳥や」
「そうやもな、天命を読んだ」
自身のそれをというのだ。
「わしのな」
「そう確信されましたか」
「殿は」
「そうなのですか」
「だからな」
それ故にというのだ。
「わしはこれより帝にお仕えしてだ」
「幕府と戦う」
「そうされますか」
「うむ」
こう側近達に答えた。
「そして幕府を倒す」
「そうですか、ではです」
「我等も共に」
「殿がそう言われるなら」
「何処までも殿と共に」
「よいか、幕府は強く大きい」
正成は自分についていくと答えた側近達に問うた、見ればそこにいる者の誰一人として異を唱えず目も澄んで正成をじっと見ている。
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