第六百六十二話 気付けば二本その九
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「しかも正統派のな」
「正統派マッドサイエンティストですか」
「そうじゃ、確かに人の命なぞ知ったものではない」
伊達に数億人殺してきた訳ではないというのだ。
「生体実験も大量破壊兵器の開発と製造もじゃ」
「そして使用もですね」
「わしは一切躊躇せん」
野上君に対して話した。
「まさに眉一つ動かさずじゃ」
「人も殺しますね」
「それはこの宇宙に入る前から変わらぬ」
二百億年以前からだというのだ。
「神々と言われる中におった頃からな」
「博士って神様になりますね、そういえば」
「人の認識の中ではな」
「そうですよね」
「そう言われている中の一人でな」
「世界樹、宇宙樹ですね」
「それの管理をしておったがな」
「宇宙は実は一つ一つが大樹の木の葉ですね」
「そうじゃ、木の葉一枚一枚がパラレルワールドでな」
「木の葉は無数にありますね」
「人では認識出来んまでにな」
それ程度多くの世界があるというのだ。
「無量大数ですらきかぬ」
「そこまで多いですね」
「その宇宙の一つ一つを管理しておったが」
「その頃からですか」
「わしには美学があってな」
己を律するそれがというのだ。
「それに従ってじゃ」
「人は殺してもですね」
「一般市民は一切害さぬしな」
「殺すのは外道だけですね」
「そして身だしなみもな」
「いつも整えていて」
「振る舞いもじゃ」
こてもというのだ。
「いつもじゃ」
「紳士的なんですね」
「うむ、その漫画の様なじゃ」
「野蛮なことはされないですね」
「あの漫画は読んでいて実に不愉快であった」
博士は野上君に憮然とした顔で述べた。
「百巻以上続いてもじゃ」
「キャラが全部野蛮人ですか」
「異常に短気で無教養でしかも下品なな」
「そんな漫画もあるんですね」
「だから原作者の人間性が悪いとな」
それならというのだ、漫画にしろ他の創作にしてもどうしても創作者の個性が出てしまうものなのだ。
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