第六百六十二話 気付けば二本その八
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「魂は売っても品性は捨てるな」
「魂を売ってもですか」
「左様、真の悪役は品性があるな」
「創作でもそうですね」
「堂々とした悪役は品性があるであろう」
「ええ、悪いことをしても」
「美学がありじゃ」
そしてというのだ。
「品性もじゃ」
「あるんですね」
「その漫画の連中は品性がなかった」
「登場人物全員がですか」
「兎角何でもないことでじゃ」
それこそ水道水を飲む様なことでだ。
「激怒してな」
「騒ぐんですか」
「うむ、そして教養もない」
短気なうえにだ。
「そのうえ品性もじゃ」
「ないんですね」
「今話した様な奴が主人公であるからな」
「周りも同じレベルですか」
「主人公の父親も同じであった」
陶芸家であった、そして各界に強い影響力を持っていた。
「食事がまずいと怒鳴って料理を皿ごと投げる」
「あの、屑もそこまでいくと」
「食事を投げるなぞ言語道断であるな」
「ちゃぶ台ひっくり返すのと同じじゃないですか」
野上君は呆れた声で述べた。
「もうそれこそ」
「それをやるのがじゃ」
「その親父ですか」
「そしてこの親父が良識派じゃ」
「普通の創作だとお料理投げた時点で屑確定ですがね」
「わしもせんな」
「ええ、博士は確かに連合一の凶悪犯ですが」
何億人も殺した結果だ、博士は趣味でその辺りのならず者を遊びで斬殺している。凶悪犯そのものであるのだ。
「しかしです」
「そうしたことはせんのう」
「外道な振る舞いはされませんね」
「下品な振る舞いもな」
「そうですね」
「美学じゃ」
博士はこれを出した。
「美学があるのじゃ」
「博士にはですね」
「そうじゃ、法律なぞ無視してもじゃ」
そうであってもというのだ。
「わしにも己を律するものがある」
「それが美学ですね」
「マッドサイエンティストのな」
それのというのだ。
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