暁 〜小説投稿サイト〜
霊群の杜
火車
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神もこいつの性質を『牢獄』として活用するつもりで。
「なぁ、床屋の前に立ってる、アホみたいにグルグル廻る赤と青のポール、あれ何を意味しているか知っているか」
「あ?ええと…」
「赤は動脈、青は静脈。嘗て床屋の仕事ってのは、医者が兼業していたんだよねぇ」
奉はここ数日で一番の笑顔を浮かべてガラス容器の上部を叩いた。
「床屋、ゲットだ。縁に云っておけ、俺には専属の床屋が出来た。もうハサミを持ってくるな、とな」
……はぁ!?
「いやそんな無茶な!!そりゃ昔の話だろ!?」
『出来るよー。プロ並みに』
「出来るの!?」
ホント優秀なんだけどな!変態殺人鬼じゃなければ!!


――俺は昔、祖母に聞いた昔話を思い出していた。
悪いことをした人はね、死んでも天国にいけないんよ。お葬式の最中に『火車』っていう地獄のお使いがね、死体を攫いに来るんだよ。そして火の車に乗せて、地獄へ運んでいくんだからね。だから結貴、悪いことはしちゃいけないよ。

死して火車で連れ去られ、安らぎを得られることなく、思考だけの存在にされて理不尽な祟り神に使役されながら薄暗い洞の中で永久に近い年月を過ごし続ける。これは針の山や血の池のような目に見えるものではないが、確実に『地獄』に分類される状況なのではないだろうか。そしてこの状況は好意に捉えれば奉への報酬かもしれないが、悪意に捉えれば、薬袋にとっての『地獄』の始まりなのでは…。

地獄とよばれているものは、あの世ではなく、より過酷な現実のことなのかもしれない。


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