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展覧会の絵
第六話 エトワール、または舞台の踊り子その十三
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だ。彼女ではなくだ。男だというのだ。
 そしてその男についてだ。十字は話した。
「華やかに見える世界でも実はね」
「闇が支配していますか」
「そう。それは全ての世界でそうだから」
 ありとあらゆる世界、それがだというのだ。
 こう話してだ。それからだった。十字はあの清原塾の話をしたのである。
「そしてね」
「そしてとは」
「あの塾も。表は普通の塾だけれど」
「実は違いますか」
「そう、闇が支配しているんだ」
 今二人が見ているその絵と同じだというのだ。
「そしてその闇こそが」
「理事長とその協力者達ですね」
「そう。少し見ただけでは気付かない」
 その闇にだというのだ。
「けれど。裏側から見れば」
「わかりますね」
「そう。そしてその裏側を見るのがね」
「枢機卿ですね」
「そのうえで神の裁きを執行する」
 十字は淡々と述べ続ける。
「それが仕事だからね」
「そうですね。しかしこの絵は」
 神父は踊り子の絵をまた見た。そうしてだ。
 眉を曇らせてそのうえでだ。こう言ったのだった。
「美しいのですが。本当に少し見れば」
「そう。少しだけだとね」
「しかしよく見れば実に」
「恐ろしいね」
「はい、とてもです」
 十字にだ。神父は答えていく。
「闇の恐怖がありますね」
「そう、闇のね」
「この絵はバレリーナのそうした世界まで描いたものですが」
「あの塾はね」
「人間の闇ですね」
「それそのものだね」
 現実にあるだ。それだというのだ。
「だからこそ何とかしないとね」
「神がそう思われていますね」
「そう。神は見ておられるから」
「では今回も」
「裁きを下す為に」
「御働き下さい」
 神父が十字に告げてだ。そのうえでだ。
 二人は礼拝堂で十字架の主に頭を下げた。そうして深々と祈りを捧げたのだった。


第六話   完


                 2012・2・17
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