第六話 エトワール、または舞台の踊り子その十三
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
だ。彼女ではなくだ。男だというのだ。
そしてその男についてだ。十字は話した。
「華やかに見える世界でも実はね」
「闇が支配していますか」
「そう。それは全ての世界でそうだから」
ありとあらゆる世界、それがだというのだ。
こう話してだ。それからだった。十字はあの清原塾の話をしたのである。
「そしてね」
「そしてとは」
「あの塾も。表は普通の塾だけれど」
「実は違いますか」
「そう、闇が支配しているんだ」
今二人が見ているその絵と同じだというのだ。
「そしてその闇こそが」
「理事長とその協力者達ですね」
「そう。少し見ただけでは気付かない」
その闇にだというのだ。
「けれど。裏側から見れば」
「わかりますね」
「そう。そしてその裏側を見るのがね」
「枢機卿ですね」
「そのうえで神の裁きを執行する」
十字は淡々と述べ続ける。
「それが仕事だからね」
「そうですね。しかしこの絵は」
神父は踊り子の絵をまた見た。そうしてだ。
眉を曇らせてそのうえでだ。こう言ったのだった。
「美しいのですが。本当に少し見れば」
「そう。少しだけだとね」
「しかしよく見れば実に」
「恐ろしいね」
「はい、とてもです」
十字にだ。神父は答えていく。
「闇の恐怖がありますね」
「そう、闇のね」
「この絵はバレリーナのそうした世界まで描いたものですが」
「あの塾はね」
「人間の闇ですね」
「それそのものだね」
現実にあるだ。それだというのだ。
「だからこそ何とかしないとね」
「神がそう思われていますね」
「そう。神は見ておられるから」
「では今回も」
「裁きを下す為に」
「御働き下さい」
神父が十字に告げてだ。そのうえでだ。
二人は礼拝堂で十字架の主に頭を下げた。そうして深々と祈りを捧げたのだった。
第六話 完
2012・2・17
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ