第五十七話 梅雨だからその六
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「きっとね」
「描かないと駄目っていう」
「やっぱり直接描くと違うから」
「ああして奇麗なのね」
「そうなんだよ」
まさにというのだ。
「そうしたらね」
「そういうことね」
「描いてもそんなに時間がかかるから」
部長がまた言った。
「だからね」
「本当に入れるとなると」
「とんでもないよ」
「かなり時間がかかりますね」
「そしてお金もね」
「やっぱりかかりますね」
「専門職でかなりのスキルが必要でね」
入れ墨を入れるにもというのだ、だからこそこうした仕事の者は入れ墨職人と言われているのである。
「専門的な」
「かなりのお金がかかるんですね」
「そうだよ、安くはないよ」
決してというのだ。
「入れ墨もね」
「かなりお金がかかりますか」
「しかも痛いからね」
「針で色を入れていくんで」
「そうだしそんな思いをして身体にも悪いから」
「入れるのはですね」
「現実では絶対にね」
それこそというのだ。
「やるものじゃないよ」
「真っ当な人はですね」
「そんなのアウトローの世界だよ」
その世界に住んでいる人間の行いだというのだ。
「実際自衛隊の人達入れてないね」
「そうですね、お巡りさんは当然として」
「昔から軍隊では入れてないよ」
「そうなんですか」
「少なくとも日本ではね」
部長は咲に話した。
「元々軍人さんは武士だって考えがあるから」
「武士は入れ墨は入れないですね」
「アウトローじゃないからね」
「むしろ正道ですね」
「そこにいる人達だから」
だからだというのだ。
「それでね」
「入れ墨は入れないんですね」
「そうだよ、武士が入れなくてね」
「兵隊さんもですね」
「士官になると尚更だったよ」
その立場になると、というのだ。
「絶対になかったよ」
「そうでしたか」
「兵隊さんでヤクザ屋さんからなったら」
そうした者はというのだ。
「物凄く怒られたんだよ」
「入れ墨があったら」
「映画でもそうした場面あってね」
部長は咲にこちらの媒体の話もした。
「高倉健さんが怒られたんだ」
「あの人の作品でのことですか」
「そうなんだ、ヤクザ屋さんで軍隊に入って」
「それで入れ墨がばれて」
「先任下士官の人に物凄く怒られたんだ」
「兵隊さんってヤクザ屋さんより怖いんですか」
「先任下士官になるとそうだよ」
冗談抜きにとだ、部長は話した。
「今の自衛隊でもね」
「怖いんですか」
「うん、それで今の自衛官の人達もね」
「入れ墨ないんですね」
「一人もね」
「そうなんですね」
「自衛官も真っ当な人達だから」
それでというのだ。
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