第六話 エトワール、または舞台の踊り子その十
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「壁のこれはどうかな」
「絵画ですか」
「こんなものまで飾ってるよ」
見ればそれは油絵だった。しかしそれは。
芸術や高尚とは全く違うものだった。複数の裸の男が一人の若い女を陵辱するものだった。好色と残虐、その双方があるおぞましい絵だった。
その絵を見てだ。神父は今度はこう言った。
「これは」
「酷い絵だね」
「この様な絵を飾っているのですね」
「そう。壁にね」
「芸術とは程遠いというものではありませんね」
「醜いね」
十字は画像に写したその絵をこう評した。
「絵はそれを飾る者の心を映し出すもの」
「ではこの理事長は」
「他にもあるよ」
今度はだった。
一人の初老の男が幼女から少女、美女までを侍らしてだ。肉欲の限りを尽くしている絵だった。その少女達や男の顔は神話や宗教を題材にしたものの西洋人のものではなかった。
どの顔もアジア系だ。そして男の顔は。
「理事長の絵だよ」
「ではこの少女達は」
「この十階には殆ど誰も入られないけれどね」
だがそれでもだと。十字は話していく。
「限られた人間だけが理事長に呼ばれるからね」
「小学生から予備校生まで。確か」
「顔立ちや肢体のいい娘ばかりがね」
「ではです」
神父は十字の今の話からすぐに察してだ。こう問うたのだった。
「その絵の少女達は全て」
「おそらく。この階に呼ばれて」
「そうしてですね」
「慰め者にされていますね」
「つまりこの絵は理事長にとっては己の宴を描いた最高の芸術なんだよ」
「最高の、ですか」
「そう。理事長にとってはね」
そういうものだとだ。十字は述べた。そしてだ。
そのうえでだ。彼はこうも言った。
「廊下だけじゃないから」
「部屋もありますね」
「そう、部屋も見るよ」
十字は神父に述べてすぐにだった。ある部屋に入った。そしてだ。
その部屋の中は寝室だった。塾にはない筈のベッドがある見事な部屋だ。だがその部屋は。
非常に歪なものがあった。ベッドの周りには様々な道具があった。それは。
「拷問器具ですか」
「そうだね」
神父の顰めさせた声での問いにだ。また答える十字だった。
「これはね」
「というとこの部屋で」
「うん、ここは理事長の宴の部屋だよ」
「嗜虐性、サディズム」
神父はそうした言葉を述べていった。
「よくある話ですが」
「理事長はその世界にいる人間だね」
「サド侯爵」
神父はそのサディズムの語源になったかつてフランスにいた一人の貴族の名前を出した。
「それですね」
「そう。理事長はその世界の人間だね」
「この部屋で少女達を次々と」
「手ご
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