第69話 足踏みの原因
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いるのか?」
「おりますが……あまりお信じにはなっていらっしゃらないようです。特に総参謀長は」
「貴官の目で見てはどうだ? ウチがウソ言っているように見えるか?」
「士気旺盛の四〇〇〇隻、まったく損害の無い二個師団。羨ましすぎて涙が出そうです」
「そういうわけで、こういうモノを作る時間もあるわけだ」
そう言って俺はブライトウェル嬢に指で指示して三次元投影機を起動させると、俺とブライトウェル嬢作、独立部隊参謀集団編曲の戦闘哨戒作戦案をニコルスキーに見せつけた。突然起動した投影機にニコルスキーは驚いたが、内容を読み進めていくうちに、その度合いはさらに大きくなる。そして最後まで見終わると、大きく溜息をついてから俺に力の抜けた乾いた顔を向けて言った。
「時間でも物資でも知性でもなんでも、余裕って大事ですね」
「黙ってて悪かったな」
「いや、当司令部にエル=ファシル攻略部隊司令部の皆様が怒っているのは当然です。こちらこそご迷惑をおかけします」
「直ぐに動けないということはわかってくれるな?」
「理解しました。ですが、ここまで作戦案が独立部隊間で共有されているのであれば、掃討作戦からアスターテ星域へは分進進撃も可能なのではないでしょうか?」
それは俺も考えなかったわけでもない。時間の節約にもなるし、節約できれば死ぬ兵士も減る。だが分進進撃とアスターテという二つの言葉はどうしても相性がいいとは思えなかったのだ。
「それを決めるのは現在実施中の偵察哨戒の結果だろうが、いずれにしてもエル=ファシル星域内で全体最終補給を行うべきだと考える。そこのところを詰める作業を、貴官にも手伝ってもらいたい」
「喜んでやらせていただきます。それこそ小官の任務であり、戦略研究科出身者の本懐であります」
そういうとニコルスキーは立ち上がって俺に敬礼する。俺もそれに合わせて答礼するが、手を下ろした時、ニコルスキーが小さく首を傾げてから聞いてきた。
「ところでこの作戦立案に寄与したというジェイニー=ブライトウェルという方はいったいどういう人物です? 階級がないようですから軍属の方だと思うのですが……」
言い終わる前に俺は振り向くことなく、左親指を立てて後ろに立つブライトウェル嬢を指差すと、今度こそニコルスキーの顎が外れたようにも見えるのだった。
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