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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第69話 足踏みの原因 
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だ。

「ここで聞いたことは誰にも話さない。彼女にも緘口させる」
 俺がそう言うと、ようやくニコルスキーは俺の後ろに、出会った頃と同じツンドラなブライトウェル嬢が立っていることに気が付いたようだった。
「教えてくれ。ニコルスキー。イゼルローン攻略部隊の司令部はどんな状況だ?」
「……悲惨です。特に攻略作戦指導部と地上軍司令部は、もはや敵同士に近いです」

 ニコルスキーの話はだいたい司令部の推測をなぞるようなものだった。スケジュールの遅れから帝国軍は防御態勢をがっちり固め、イゼルローン前面に艦隊を展開する為に必要な前線基地を作る為、地上軍は帝国軍の防備の固いカプチェランカやラーム、アンシャルといった星系の惑星に送り込まれている。

しかしアスターテからの補給線圧迫により巨大輸送艦の展開ができず、中型輸送艦による細い輸送線によって戦線が支えられている。物資も、数だけはいっぱいいる艦隊の方に吸い取られ、地上軍に渡るものも少なく将兵の血を惑星表面にひたすら染み込ませる作業ばかりしている。

 攻略部隊に付属している地上軍司令は、イゼルローン要塞攻略の為の兵力がこのままでは失われると判断し事態の早急な改善を求めた。しかしイゼルローン要塞攻略の為にはやはり大規模な艦隊戦力が必要なことから、攻略司令部はその要請にお茶を濁すような戦力での増援を行い、挙句の果てにはアスターテからの妨害部隊によってその増援すら破壊される事態に至った。

「長官はもはや前進基地造設を止め、一気にイゼルローン要塞前面へ艦隊を展開しようとなされておいでです。艦隊決戦によってイゼルローン駐留艦隊を撃破する。その事を地上軍司令に伝えてしまったのがとどめになったみたいです」

 善意で考えるならば長官は地上で血を流した将兵達の命を軽んじる意図ではなく、艦隊決戦に全てを賭け策源地を踏みつぶして地上軍のこれまでの労苦に報いたいと思っていたのだろう。が、実際に血を流している側からしたら、いまさら何を言うんだということだ。

そういうギクシャクを解消するのが総参謀長や副参謀長といった幕僚上層部だろうが、カステル中佐が散々コケにするように、個々の調整能力が低いということかもしれない。それだけシトレ・ロボスと言った中堅層に優秀な面子が吸い取られているというところだろう。彼らからしたら叩き上げであるビュコック爺さんは、むしろ都合のいい予備兵力に見えたのかもしれない。

「アスターテ星域には約三〇〇〇隻が展開していると、当司令部では考えております。エル=ファシル攻略部隊とドーリア星域防衛艦隊が合わさって前線展開できる戦力はほぼ同数。とにかくダゴン星域に妨害部隊が出てこないようにしてほしいというお考えです」
「エル=ファシル攻略の戦況報告はイゼルローン攻略司令部にはちゃんと伝わって
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