第69話 足踏みの原因
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同乗していた。
「宇宙艦隊司令部イゼルローン攻略部隊幕僚部のテッド=ニコルスキー中尉であります。宇宙艦隊司令長官よりビュコック司令官宛に書面を預かっております」
俺と同じ西スラブ系の中肉中背で参謀の赤と白斜めのバッジを付けた青年士官が、第四四高速機動集団司令部全員の面前で、直接爺様に書簡を渡した。爺様は指紋認証で封を切ると、たっぷり時間を掛けて一読後、まるでスーパーのレシートのようにモンシャルマン参謀長に手渡した。
その何気ない動作にニコルスキーの瞳孔は一瞬ひらいた。モンシャルマン参謀長からモンティージャ中佐、モンティージャ中佐からカステル中佐、カステル中佐から俺、そして俺からファイフェルと、自分が命懸けで持ってきた『軍事機密』が手軽に順繰りと廻されたのを見て、口を閉じたままどうしたものかといった感じで視線を彷徨わせている。
「確かに確認した。あ〜、ニコルスキー中尉。長官は何か貴官に言付を頼んではおらんかったかね?」
そんな青年士官の複雑なプライドと困惑を見透かしたように、ファイフェルから戻ってきた封印指令書をこともなげに未決の箱に放り込んだ爺様の問いに、ニコルスキー中尉は改めて背筋を伸ばして応えた。
「ハッ。『物資補給が済み次第、可能な限り速やかに実行されたし』とのことであります」
「まぁ、そんなところじゃろうな」
「え?」
「中尉。貴官はこれからどうする。捕虜と一緒にエルゴン周りで帰るのか?」
「いえ、『第四四高速機動集団と行動を共にし、作戦遂行について尽力せよ』と指示を受けております」
「それはそれはご苦労なことじゃな」
爺様の強烈な皮肉を全身に浴びたニコルスキー中尉の顔は、完全に引き攣っていた。爺様が気難しい年配将校であることは事前にイゼルローン攻略部隊司令部から聞かされているだろうし、同司令部はエル=ファシル攻略部隊が『ずるをしている』と評価しているだろうから、中尉としては敵地のような場所に残ってイゼルローン攻略部隊の助力になるよう尽くさなければならない。確かに爺様の言う通り『ご苦労なこと』だ。
俺の記憶が確かならばニコルスキー中尉は戦略研究科で二つ年下、ファイフェルの一つ上のはずだ。ファイフェルに視線を送ると、瞼で『何とか助けてやってくれませんか』と言っている。モンティージャ中佐は口をへの字にして肩を竦めているし、カステル中佐は完璧に無表情。参謀長の額には僅かな怒りが浮かんでいる。ここはもう俺の出番と言うことか。
「ビュコック司令官閣下」
「おぉ、ジュニア。頼まれてくれるか?」
「いろいろ小官もかの司令部には言いたいこともありますが」
「よかろう。貴官に任せる。儂らはまず足元を固めなくてはならんからな」
既にアスターテへの戦闘哨戒作戦を立案しているにもかかわら
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