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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第69話 足踏みの原因 
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うとは思う。中級指揮官からすればポッと出の若い士官などに作戦・演習指導されるのは、自分のキャリアを否定されているようなものだ。キャリアとノンキャリアの理不尽な壁についてはいつの時代も変わらない。ヤンのように不敗と奇跡の伝説を作り出せる才能があればそれも克服できるだろうが、今生の俺は少しばかり『未来らしきものを知っている』だけの凡人にすぎない。

 フルマー中佐は確か三〇代半ば。出世のスピードとしては遅くはない。俺はたまたまの敵運の良さと縁故・引き合いのおかげで二五歳の少佐。このままいけばアップルトン提督の参謀長として、アムリッツアで戦うことになる彼にとって、俺はまだまだ爺様の陰に隠れている生意気な孺子に過ぎない。

「ご指導ありがとうございます、中佐。今後も精進いたします」
「まぁあれだけ華麗な包囲殲滅戦と、詐術のような地上攻略戦を見せられてはね。つくづく机上の理論では士官学校の首席に勝てるわけがないと思ったよ」
「はぁ……」
「今回は敵の弱さと脆さに運があったかもしれないが、そういう運を掴むのも才能の一つだ。偉そうなことを言わせてもらえれば、貴官はそういうものを大事にするんだな」

 そういうとフルマー中佐側から超光速通信は切られた。俺は灰色になった画面に映る、今世の自分の顔を改めて見つめる。前世の東アジア人丸出しののっぺりした顔とは全く違う。だが中身は死んだ時から大して進歩していない。

「一所懸命、か」

 俺は一つ溜息をつくと、超光速通信室の扉を閉じ、ファイフェル先生の居る司令部会議室へと戻るのだった。





 六月七日。

 第八七〇九哨戒隊がエル=ファシル星域内の帝国側支配領域各星系に潜伏しつつ収集した、残存帝国艦隊の情報がほぼ纏まった。当初の予想通り、星域内に残っている戦闘艦艇は一〇〇隻に満たず、各個哨戒隊以下の規模で構成されていることを確認したため、爺様とモンシャルマン参謀長は各星系掃討作戦の実施を独立部隊に指示した。第四四高速機動集団も次席指揮官であるジョン=プロウライト准将と、機動集団第三部隊指揮官となったネリオ=バンフィ代将が、それぞれ部隊を率いて、星系制圧へと向かうことになる。

 同日、第一一戦略輸送艦隊臨時A四二〇八輸送隊が、護衛を兼ねた第五四四独立機動部隊とともに、惑星エル=ファシル軌道上に到着。巨大輸送艦三二隻に満載された物資は、これから捕虜と共に後退する第三五一独立機動部隊や地上戦部隊も含めたエル=ファシル星系攻略部隊の活動力を回復するのに十分すぎるほどの量がある。物資整理によって空になる巨大輸送艦は九隻で、この九隻は捕虜と警備兵役となる第三二装甲機動歩兵師団隷下の二個歩兵連隊を積んでエルゴン星系に後退することになる。

 そして臨時の分艦隊には封印指令書を有した士官が
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