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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第69話 足踏みの原因 
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ね」

 爺様の右前に立つモンシャルマン参謀長が、俺に問う。穴を見つけて攻めるというより、リスクに対する相互認識に齟齬がないかの確認だろう。

「当初一週間を除き、エル=ファシル星系には独立部隊一個の戦力が常駐します。二〇〇隻程度の嫌がらせは一蹴です。一〇〇〇隻規模の戦力を投入したとしても、第八七〇九哨戒隊が各跳躍宙域に網を広げていますので即時確認・撤退は可能です。またそれだけの規模の戦力を迂回進撃させるならば、ドーリア星域防衛艦隊の哨戒艦も気が付きます」
「では貴官が実施に際して考慮すべき問題点は?」
「作戦開始前に敵戦力の正確な把握が必要です。補給体制が整ってあれば空間自体は広いので、ゆうに二万隻以上を展開することができます。それだけの戦力を前線配置するほど今の帝国軍に余裕はないはずですし、情報部も見逃すはずはないと思いますが、現実が空想を超えることはよくあります」
「貴官の意見に同意する。ビュコック司令官、いかがでしょうか?」

 モンシャルマン参謀長が爺様を振り向くと、爺様も『まぁ、よかろう』と言った雰囲気で頷いた。

「まだ正式に命令は下っていないが、いつでも動けるように各独立部隊や分艦隊の参謀と検討を進めておくように。儂の名前を使って構わん」
「承知しました。ありがとうございます」
「特にイゼルローン方面が敗北した時の、撤収方法については重点を置いて検討せよ。我々は戦術目標を既に完遂している。おまけのような戦で、将兵を無駄死にさせるな」
「はっ」

 そう言って作戦素案に爺様がサインをすると、俺に手振りをして近づくよう仕草する。前にこの仕草をした時には、爺様の鉄拳が俺の頭頂部に飛来したので、俺は僅かに体を後退させたが、爺様は見逃すことなくもう一度力強く手振りする。

 仕方なく爺様の拳の有効射程範囲にまで体を寄せると、爺様の力強い右手がガッチリと俺の左肩を掴んだ。

「ジュニア。儂は嬢ちゃんにジュニアの手伝いをするように言っただけであって、超過勤務をさせるつもりはなかったんじゃが?」
「……は、はい」
「嬢ちゃんは有能な士官ではなく、年端もいかない軍属であるのはジュニアも分かっておるんじゃろうな?」
「それは勿論」
「軍教育を殆ど受けとらん一六歳の少女に、二〇代の参謀士官並の仕事をさせるのは、上位者としての労務管理がなってないということじゃぞ?」
「えっ?」

 いつも俺に無茶振りな課題を出す爺様がそれを言う? とか思った瞬間、爺様の鉄拳が天頂部に飛来した。今回は左拳なのでマーロヴィアの時よりは威力は小さかったが、俺の片膝を床につけさせるには十分な威力だった。右目を閉じで歯を食いしばりながら顔を上げると、厳しい表情の爺様、感情をあえて消してますと主張している参謀長、そして微妙に笑みが浮かんでい
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