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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第69話 足踏みの原因 
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の戦力を、襲撃に割り当てていると推測される。

 これはエル=ファシル星系を攻撃した一〇ケ月前のアスターテ星域帝国軍前進部隊の数とほぼ一致する。つまりこれだけの戦力を遊撃に出せるだけの戦力が、アスターテ星域にあると考える。ならば、まずその三倍。三六〇〇隻程度が星域に駐留していると考えるのが常識だ。

 そしてアスターテ星域の後背にはアルレスハイム星域があり、そこには帝国側の有人可住星系が存在する。民間人がいるかまでは不明だが、可住惑星の無いアスターテ星域の駐留部隊は、そこを補給・休養基地とする推測に不自然さはない。

 人間の肉体と精神の構造上、どんなに厳しく鍛えた軍人であっても半年以上宇宙空間に拘束されるというのは厳しい。マーロヴィア星域で海賊狩りしていた時は、勝利の興奮がかろうじて疲労を覆い隠していた。プライベート空間の狭い軍艦で、代わり映えのしない乗員と暮らすストレスは半端ない。ジムやミニシアターのような設備が艦内にあったとしても、蓄積された精神の疲労は集中力の低下を招く。

 そしてエル=ファシル星系に同盟の大戦力がいると勘違いして、アスターテ星域の帝国軍が基本を守勢とし、ダゴン星系への嫌がらせに勤しんでいるのは、ウチの司令部の共通認識だ。

 故に『敵戦力が不明な以上、持てる最大戦力を投入する』と『エル=ファシル星系をカラにする』は両立できる。まず当初第四四高速機動集団と二個独立部隊、あわせて三六〇〇隻をひとつの星系に集中投入する。エル=ファシル星系の防衛は後方補給線の維持も併せて、一個独立部隊に任せる。補給と後退を兼ね、一〇日おきに一個独立戦隊分の戦力を、エル=ファシルとアスターテ間で動かす。

 忙しい話になるだろうが、アスターテ星域の帝国軍はこの三六〇〇隻の同盟軍前進部隊を一気に覆滅するだけの戦力がない限り、ダゴン星域への妨害行動は停止せざるを得なくなる。仮にアルレスハイム星域にそれだけの戦力があったとしても、現在一隻でも機動戦力が必要なのは後方のアルテナ星域(イゼルローン)なので、アスターテ星域への追加投入は不可能。藪蛇となってエル=ファシル星系から『同盟の援軍』が出てきては、『アスターテ星域が同盟の手に落ちる』危惧すらある。

 期間はイゼルローン攻略部隊が再編成して要塞前面にたどり着くまでの一ケ月。第四四高速機動集団も三個分艦隊に分かれて運用する。ただし司令部のある戦艦エル・トレメンドと直衛艦分隊だけはその一ヶ月間前線に留まることになる。

「すでに五〇の偵察哨戒部隊をアスターテ星域に送り込んでいるとモンティージャ中佐から伺っております。敵の耳目は充分にこちらに向きつつあると考えてよいかと」
「理には適っているが、損得を無視してアスターテ星域の前進部隊が逆にエル=ファシル星域に進攻してくるリスクはどうか
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