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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第69話 足踏みの原因 
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 宇宙歴七八九年 六月 三日 エル=ファシル星域エル=ファシル星系 戦艦エル・トレメンド

 司令官、参謀長、補給参謀、司令官付き副官、旗艦副長・警備主任・軍医長・同看護班長・司令部付通信オペレーター・その他戦艦エル・トレメンド乗艦の女性軍人の皆さまからの、叱責の集中砲火を受けた作戦参謀は、辛うじて期限内にアスターテ星域に対する戦闘哨戒作戦の素案を、爺様に提出することができた。

「嬢ちゃんはもう少し体を鍛えた方がいいの」

 提出翌日、改めて作戦素案の説明に上がった俺を直立不動で立たせたまま、司令官公室で爺様は今まで聞いたことのないような優しい好々爺の声で、恐縮してトレーを持つブライトウェル嬢に諭した。

「勉強も必要じゃが、まずは体力じゃ。そこに突っ立ってる作戦参謀には体力オバケの友人が大勢いるらしいから、紹介してもらうといい。どうせ地上で暇しているじゃろうからな」

 確かに地上軍は暇だろうが、それこそ『軟弱な宇宙軍の従卒少女を鍛えるなんてばかばかしい』と思ってるだろうから、頼めるのはジャワフ少佐ぐらいだろう。たしかに地上戦が終わった後の連絡士官なんて相当暇だろうから、戦艦エル=トレメンドに来てもらってもいいかもしれない。頭の中でぼんやりとディディエ少将にどう説明しようかと考えていると、トントンと爺様が机を指で叩いて俺を呼んだ。

「ジュニア。貴官が提出した素案を読むには読んだ」

 今度は打って変わって、いつものおっかないオッサンの声だ。怒っているという感じではない。むしろ理解はできるが、どう質問したらいいか分からないといった感じだ。まぁ、それはそうだろう。

「実施の可否はともかく、アスターテ星域への戦闘哨戒はエル=ファシル星域の宇宙戦力を、ほとんどカラにしてまで行なわなければならない作戦とは思えんが」
「お答えいたします。アスターテ星域へ出た偵察哨戒の結果が出揃っていませんので、敵勢力の規模も配置も現時点では不明でありますが、ダゴン星域への補給線破壊活動の頻度及び投入戦力から考えて、どれほど大きくても五〇〇〇隻を超える戦力が配置されているとは考えにくいと思われます」

 アスターテ星域には二〇余の星系があるが、以前から行われているドーリア星域防衛艦隊からの偵察から、一個艦隊規模の補給や修繕を行えるような可住星系も補給基地も確認されていない。

 イゼルローン攻略作戦に対する補給線への妨害活動は、二〇〇隻ないし三〇〇隻程度の巡航戦隊が三日から五日おきに場所を変えて襲撃してくる。ダゴン星域からアスターテ星域まではおよそ三日の行程で、それぞれの星系間移動に三日、襲撃タイムラグに三日かかると考えれば、およそ一五日(半月)を一行程とした襲撃スケジュールを組んでいる。隊毎に補給と休養を考えるとその四倍の一二〇〇隻程度
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