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モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の九
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「伝説世代」の妹という色眼鏡で見られることを嫌っている彼女は、普段からリノプロシリーズのずんぐりとした防具で全身を覆い尽くしている。そのため、女性であることすら仲間達にもほとんど知られていなかったのだ。

 母譲りの赤い長髪に、年齢以上のグラマラスな肉体。兜や鎧の下に隠された、その女性らしい真の姿を知っている者は、特に親しい仲であるソランを含めてごく僅かだ。

「それにしても……さっきの『訛り』、久々に聞いた気がするな。いつ聞いても素朴な響きで、可愛らしいものだ」
「……お前、いつかサリアに刺されても知らんぞ。この生粋の女誑しめ」

 兄譲りの「訛り」を指摘された彼女は、半壊した兜の下で可愛らしく頬を膨らませている。素顔がほぼ露わになっている今ならば、きっとこれから多くの仲間達が、彼女の美貌を知ることになるのだろう。

 ――そして。木製の城塞で迎撃に当たっていたガンナー達の中で、最も深傷を負っている身でありながら。なおも気品に溢れた佇まいと優雅な笑みを維持している1人の美少女が、額から滴る鮮血にも構うことなく、そのわ口角を吊り上げていた。

「……ふふふっ。さすがは私と共に、このクエストに臨んで下さった強者の皆様ですわ。それでこそ、このホーエンブルク辺境伯……ブリュンヒルト・ユスティーナの同期! 実に誇らしい限りですことッ!」

 ハンターズギルドに出資している大貴族の当主でありながら、自らもハンターとして前線に出ている、高貴にしてワイルドな女傑――ブリュンヒルト・ユスティーナ・マルクスグラーフィン・フォン・ホーエンブルク。
 その華奢な身体で背負っているカムラノ鉄弓も、ギルドクロスシリーズ一式の防具も、すでに傷だらけだというのに。それらを纏っている彼女自身は、傷も汚れも一切顧みることなく、大貴族としての気高い笑みを浮かべているのだ。

「あぁ、情けなや情けなや……! 老山龍ともあろう者が、下位ハンターすらも殺し切ないとは! これは私達の手で、然るべき引導を渡すより他ありませんわねッ!」

 狩猟は単なる「趣味」。そう公言して憚らない彼女が、それでもこの大事件に自ら先陣を切って参加しているのは――命を賭けてモンスターに挑み続けている、全てのハンター達への「敬意」故のことなのである。

 この場に居る誰よりも、傷だらけだというのに。煌びやかなギルドクロスシリーズも、見る影もなくボロボロになっているというのに。それでも彼女の絶対的な気品と美しさは、微塵も損なわれてはいない。
 痛みも苦しみも決して表に出すことなく、仲間達を懸命に鼓舞するブリュンヒルトの勇姿は――どんな装飾よりも、彼女の美貌を艶やかに彩っている。

「さぁソラン様、イヴ様……立ち止まっている暇はありませんのよ! 我々ハンターに必要なのは、『前身』の2
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