霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の九
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ラオシャンロンの急速な侵攻により破壊された、木製の城塞。その残骸の山を自力で突き破り、老山龍の背を追い続けるハンター達は皆、殺意にも似た苛烈なる闘志をその双眸に灯していた。
例え防具がその意味を成さなくなるほどにまで損傷していようとも、彼らは躊躇うことなく歩みを進めている。理由は各々違えど、老山龍を討ち上位に昇格する――という目的だけは共通しているからだ。
「俺は……こんな、ところで……屈するわけには、行かないんだッ……!」
その1人であるソラン・ハーシャルも、デルフ=ダオラを杖代わりにしながら身を引き摺るように歩み続けている。グラビドDシリーズの防具はほとんど崩壊している状態だが、増弾のピアスを付けている彼の眼は、それでも闘志の炎を燃やし続けていた。
かつては「伝説世代」の1人であるナディア・ゴーシュの後輩として、ポッケ村に所属していた過去を持つ彼には――決して負けられない理由があるのだ。
(サリア……俺は、絶対に諦めないからなッ……!)
同期の中でもトップクラスだった少女――サリア・フローティア。彼女と共にポッケ村で活動していたソランはある日、G級相当の「炎王龍」テオ・テスカトルに襲撃され、サリアと共に瀕死の重傷を負ってしまった。
幸いにも、事態を察知して駆け付けて来たナディアによって炎王龍は撃退され、2人は辛うじて一命を取り留めたのだが――特に傷が深かったサリアは、引退を余儀なくされたのである。
(サリア……君とはもう、一緒に冒険することは出来ないけれど……せめてあの頃のように、心から笑ってくれるようになって欲しい。だから、あの炎王龍だけは……アイツだけは、俺が狩る! 俺達が、前に進むためにッ……!)
? 上位昇格の試験に臨むべく、ポッケ村からドントルマに発つ前日。メランジェ鉱石をベースとする婚約指輪をサリアに贈った時から、彼はその心に決めていたのだ。
「伝説世代」のナディアでさえ仕留め切れなかった炎王龍。その討伐を果たすまで、胸を張って彼女の元には帰れないのだと。
「……おっ、と。気負うのは勝手だが、まだ戦いは続いているんだ。こんなところで倒れている場合じゃないぞ、ソラン」
「あぁ……済まないな、イヴ。しかし、君が女性だと知った時は驚いたよ。あの『伝説世代』のシン・オーマの妹君だったことにもな」
アルクセロTを背負いながら、そんな彼に肩を貸している、リノプロシリーズの防具を纏う女性――イヴ・オーマ。「伝説世代」の一角であるシン・オーマを兄に持つ彼女は、ソランの言葉に顔を背けながら不遜に鼻を鳴らしていた。
「別に……自分が男だと言った覚えは無いぞ。それに……今の自分はオーマ、ただのオーマだ」
「そうか……そうだったな」
兄への憧れと劣等感故に、
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