霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の八
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せようとも。彼らの眼には、恐れや諦めといった負の感情など微塵も顕れてはいない。
城塞もろとも砲台を破壊された今でもなお、彼らは全く折れることなく、傷付いた身体を引きずるように老山龍を追い始めていたのである。
「……く、ふふっ。これも一つの経験……というものなのかも知れんな。上位に上がるまでの予行演習には、ちょうどいい塩梅だッ……!」
カブラシリーズ一式の防具を纏う女ハンターこと、アルター・グラミリウス。鬼ヶ島の銃身を杖代わりにして歩み続けている彼女は、満身創痍になりながらも口角を吊り上げ、軽口を叩いていた。
古龍討伐隊だった祖父から譲り受けたそのライトボウガンを武器に、祖父を引退に追い込んだ古龍を見つけ出す旅を続けて来た彼女にとっては、今回のクエストも通過点の一つに過ぎないのだろう。
「冗談じゃ、ないわッ……! 私はまだまだ、強くならなくちゃいけないのッ……! こんなところで、倒れてる場合じゃないんだからぁッ……!」
そんなアルターの背を追うように、スティールアサルトを杖にして歩みを進めている少女ガンナーが居た。
緑色の髪をショートヘアに切り揃えている彼女の名は、ジェーン・バレッタ。故郷の村への仕送りのために資金稼ぎに奔走しており、その言動通りな負けん気の強さを武器にしている若き女傑の1人なのだ。
すでに彼女の柔肌を守っていたレザーライトシリーズ一式の防具は、見るも無惨な姿になっているのだが――どれほど傷付こうとも、彼女の気高い眼はその輝きを保ち続けている。
「……こ、んなの、割に、合わな過ぎるってのッ……! ほんっと、やってられないッ……! これで報酬がしょっぱかったら、ギルドマスターの眉間に1発ブチ込んでやるんだからぁッ……!」
ジェーンと同じレザーライトシリーズ一式の防具を纏っていた少女――リリィベル。今回の作戦に参加した下位ハンター達の中でも一際小柄な彼女は、身の丈を越えるボーンシューターを引き摺りながら譫言のように愚痴を溢していた。
貧しい孤児として過ごして来た半生の中で得た、「金は命より重い」という信条。そのポリシーに則り、守銭奴上等の精神で活動して来た彼女は、今回のような「割に合わない危険なクエスト」を特に忌み嫌っている。
それでも彼女は、口先では文句ばかり垂れながらも――共に上位昇格を目指して来た仲間達を見捨てることなく、己のポリシーを曲げてまで参加していたのだ。倒れかけていたジェーンに肩を貸しながら、彼女はぶつぶつと恨み言を連ねている。
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