霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の七
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発達した体格以上のものだったのである。本来ならば下位ハンターでは決して太刀打ち出来ない、「上位種」のモンスター。その領域に極めて近しい、特殊個体だったのだ。
「だからッ……てえぇえッ!」
だが、そこまで理解したからと言って引き下がるなどという選択肢はない。上位種のドスイーオスが相手であろうと、彼らは躊躇うことなく継戦の構えを示している。
――下位ハンターである自分達の装備だけでは、老山龍の撃退は困難。その原因である火力不足を補うためには、砦内にある狩猟設備を駆使するしかない。ならば、それを阻む「邪魔者」の排除に割く労力を惜しんではいられないのだ。
「皆……やろうッ! 例え上位種だろうと、私達なら絶対に勝てるッ! 私達は、それを証明するためにここまで来たんだからッ!」
例え自分達が相討ちになるのだとしても、それで老山龍を迎え撃つために必要なものを届けられるのなら、その価値は十分にある。
それに、これから上位に昇格しようという自分達がこの期に及んで上位級のモンスターに怯んでいては、そもそもこのクエストを引き受けた意味がない。むしろ、上位クエストを受ける前の「予行演習」には最適とすら言える。
「……あぁ、そうだとも。私達は元より、上位昇格を志してここに来ているのだ。むしろ、僥倖と言うべきではないかッ……!」
それが、後に「宝玉世代」とまで呼ばれるようになる彼らの生き様なのだ。クサンテやデンホルムがそうであるように、彼らにも「前進」の2文字しかないのである。
「アーギル、リリア……行けッ! お前達だけでも、砲撃の手を緩めるなッ!」
「クサンテとデンホルムのこと……任せたぞッ!」
「……はいッ!」
「お前らこそ、イーオス風情にやられるんじゃあねぇぞッ!」
ドスイーオスの討伐に臨むエレオノール達に促され、砲弾を抱えるアーギルとリリアはこの機に乗じて砲台の元へと走り出して行く。あまりの重さ故にその速度は緩慢であったが、一刻も早く「次弾」を届けようとする彼らの眼は鬼気迫るものとなっていた。
「……言われるまでもないな。そうだとも……上位種だろうと、相手は所詮イーオスだ! やるぞ、皆ァッ!」
そんな彼らの背を見送ったエレオノール達は、獰猛に牙を剥くドスイーオスを睨み上げ、得物を構え直して行く。毒液を四方八方に撒き散らし、生意気な人間共を喰らってやろうと猛る鳥竜種は、けたたましい咆哮を上げていた。
この砦の存亡を賭けた狩人達の決して譲れぬ戦いは、ここでも幕を開けていたのである――。
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