霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の五
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ってる場合じゃない、ってのは……俺にとっても同じことさ。イーヴァ」
「……」
自分と同年代の女ハンターが、あれほどの高みに達しているというのに。自分は一体、こんなところで何をしているというのか。
その悔しさをバネに強さを追い求めて来た彼は、「伝説世代」の高みを目指して己の技を磨き続けて来たのである。
誰もが彼らを、雲の上の存在であるかのように見ている。ドンドルマに居るハンター達も、その多くは彼らをまるで神話の人物であるかのように語っていた。
本気で彼らを越えようとする人間など、一握りも居ない。それは、太陽に近付こうとして翼を焼かれる愚者の行いだからだ。
「伝説世代」が築き上げて来た幾つもの逸話は、彼らだから出来たことだ。普通の人間が真似しようなどと考えて良い内容ではない。誰もがそう言う。
――クソ喰らえ。それがルドガーの見解だった。
少なくとも彼が出会ったカエデという女性ハンターは、紛れもなく「人間」だった。神話に登場するような超然とした存在などではなく、それどころか人一倍食いしん坊な困った女ですらあった。
そんなただの女が、勝手に神様扱いされて祭り上げられているというのだ。そして己の弱さが、そんなただの女を救いの女神にしてしまった。
ルドガーには、それが1番耐えられなかったのだ。「伝説世代」の狩人達を、遥か遠くから見ているような男にはなりたくなかった。ただの女を、ただの女でいさせられるような男になりたい。
今はその想いが、ルドガーという男を突き動かしているのだ。イーヴァに背を預け、レッドビートを構え直す彼は、イーオスの群れに鋭い眼差しを向ける。
「……1人より2人の方が早い。さっさと片付けて、クサンテ達の援護に戻るぞ」
「……ふん。まぁ、そうしたいんならいいんじゃないかな。私は止めないよ、あんたのやることは」
そんな彼の過去を知るイーヴァは、悪態を吐きながらもその逞しい背に身を委ね、ウォーメイスを握り締めていた。
自分の生き方に口を挟まれることを何よりも嫌っているはずの彼女は今、ルドガーの言葉に己の命運を預けたのである――。
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