霊峰編 決戦巨龍大渓谷リュドラキア 其の三
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まうぞッ!」
「……は、はいっ……! 私、頑張りますぅっ……!」
そんな彼の言葉に背を押されたリリアも、姉の背を追うように真っ直ぐ歩み出していく。慣れない砲弾の重さに肉感的な両足を震わせながらも、その瞳はただ前だけを見据えていた。
僅かながらも、着実に成長を続けているリリア。そんな彼女の背に頷きつつ、砲弾を運んでいるアーギルは――この大渓谷に漂う空気の異様さに、眉を顰めていた。
(……嫌な予感がする。あの老山龍の異様な侵攻速度といい、妙なことばかりだ。「5年前のあの事件」の時にも、こんな気分にさせられた覚えがあるぜ……)
――ユベルブ公国第3都市「フィブル」。その地出身の専属ハンターだったアーギルは5年前、黒蝕竜「ゴア・マガラ」による襲撃事件に直面したことがあった。
「黒蝕竜の変」と呼ばれたその事件の際、街の防衛に携わっていた時にも。今まさに感じているような不吉な予感が、絶えず脳裏を過っていたのである。
形容し難い悪寒が背筋を突き抜けていく、その当時の感覚を思い起こしながらも。彼はリリアと共に砲弾を抱えながら、次弾を装填するべく大砲の元へと歩みを進めていく。
「クゥオ、次の砲弾だ! 頼むぞッ!」
「お、お願いひまひゅう〜……!」
「はいッ! アーギルさんもリリアさんも、お気を付けてッ!」
「この位置からラオシャンロンが狙えなくなったら、別の迎撃ポイントに向かうわよ!」
ラオシャンロンの負傷という、微かな兆候から窺える勝機への光明。そこに希望を見出しているアーギルとリリアは、ロエーチェとクゥオに砲弾を託すと、次弾を用意するべく弾薬庫へと駆け込んで行った。
「さぁ、次の分だ! さっきの要領でさっさと運んじまうぞ、リリア!」
「はいっ!」
鍛え抜かれたハンターの膂力でも、両手で抱えなければならないほどの重量を持つ特大の砲弾を担ぎ上げながら、2人は再び砲台を目指している。だが、弾薬庫から砲台までの通路には厄介な「邪魔者」が入り込んでいた。
「こいつらは……!」
「イ、イーオス!? でもこの数、普通じゃないですっ! しかもっ……!」
「獲物」の予感に引き寄せられた無数のイーオスが、砲弾を運ぶ2人の前に立ち塞がって来たのである。アーギルとリリアは、その異様な頭数に瞠目していた。
――過去の防衛戦においても、砲弾の運搬中に小型モンスターによる妨害を受けたというケースは幾つもある。だが、それは数頭程度のごく小規模なものばかりだった。
2人の眼前に立ちはだかって来たイーオスの群れは、10頭や20頭……という数ではない。決して広いとは言えないこの通路を、完全に封鎖してしまうほどの数だったのだ。
「……おいおい、こんな時に冗談キツイぜ……!」
しかもそこには、
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