第二章
[8]前話
「滅茶苦茶面白いな」
「昔のゲームって理不尽で難しいって言うけれどな」
「そうのも入れてだよ」
「面白いんだな」
「このゲームだってな」
三つの首を持つドラゴンと戦いつつ話す。
「攻略本わざわざ買ってな」
「そうしてか」
「遊んだんだよ」
「そこまでしてか」
「お前は平成生まれだから知らないだろ」
笑ってだ、息子にこうも話した。
「昭和のゲームってのは理不尽でな」
「ヒントとかもなくてか」
「攻略に時間もかかったんだよ」
「そうなのか」
「月刊の攻略雑誌わざわざ買ったりもしてな」
懐かしむ目になっての言葉だった。
「やったな、ファミコンのゲームだってな」
「今じゃネットですぐ攻略法出るのにか」
「そうしたサイトとか5ちゃんのスレでか」
「そうだけれどな」
「昔はそうだったんだよ」
こう言うのだった。
「本当にな」
「大変だったんだな、昔は」
「その大変さがいいんだよ」
ドラゴンの吐く炎で大ダメージを受けつつも言う、それで死んでいないが用心しようと思いながら。
「これがな」
「そんなものか」
「そうさ、母さんはゲームしないがな」
妻である彼女はというのだ。
「昭和のことを知ってるからな」
「お袋も昭和生まれだしな」
「こうしたことも知ってるさ」
「昭和のゲームのこともか」
「理不尽でゲーム中謎のヒントがなかったり滅茶苦茶難しかったり」
ドラゴンをタイミングよく攻撃しつつ話す。
「それがいいんだよ」
「そんなものか」
「ああ、こういうゲームもいいんだよ」
鉄平はプレイしつつ話す、ゲームをするその目は少年の目だった。昭和の頃にゲームをしている時と同じ目であった。
そうしてだ、孫にも笑顔で話した。
「お祖父ちゃんハイドライド3クリアしたぞ」
「えっ、凄いね」
「何十年か振りにな、ザナドゥもクリアしたしな」
「今度はどのゲームクリアするの?」
「ロマンシアもしたしな、次はオールドヴィレッジストーリーにするか」
孫に目をきらきらとさせて話した、還暦を過ぎても彼は幸せであった。昭和の若い頃に戻ったかの様に。
昭和PCゲーム 完
2022・6・23
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