第二章
[8]前話
「大人でもな」
「婆さんもいるな」
「太ったおばさんだってな」
「そんなの好きな人もいるけれどな」
「俺達はな」
「若い女性専門で」
それでというのだ。
「ちょっとな」
「婆さんやおばさんはいいな」
「混浴でも全然嬉しくないぜ」
「若い女性ばかりなんてな」
「考えたらないな」
「若い姉ちゃんと入りたかったらソープに行きな」
老人はこうも言った。
「それか恋人か風俗の姉ちゃんとホテルだよ」
「混浴か」
「そういえばそれで出来るな」
「ラブホって絶対にバスルームあるしな」
「そこで混浴出来るし」
「っていうか混浴前提だしな」
「そうさ、そうした相手とそうしたところで楽しむのが混浴ってもんだ」
老人は若者達にすっと笑って述べた。
「こうしたところで誰ともわからねえ人達としても楽しめねえぜ」
「そうだよな」
「言われてみればそうだな」
「本当にな」
「そうさ、風呂場ってのは怖いもんだ」
若者達に今度は達観して話した。
「誰もが入られるからな」
「そうだよな」
「それなら幼女や婆さんも入るしな」
「そうしたものだからな」
それ故にというのだ。
「いいものじゃねえぞ」
「そうですか」
「じゃあ行かない方がいいですか」
「混浴は」
「あまりな、脱衣場を見てもな」
そこもというのだ。
「同じだ、どうしてもっていうのならこれはって娘と入りな」
不特定多数がいる場所に行かずというのだ。
「そうするんだな」
「それが現実ですね」
「ならそうします」
「俺達も」
「そうするんだな」
こう言ってだった。
老人は旅館を出て温泉巡りに行った、若者達はそんな彼の背を尊敬の目で見た。そして彼が昔から遊び人として知られているベテラン俳優若宮治三郎だと知った。そうして遊び人故に知っていたのだとわかったのだった。
お風呂場は地獄 完
2022・6・23
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