第五話 愛の寓意その四
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そのうえでだ。こう彼に言ったのである。
「その。クラスで」
「全然大丈夫だけれど?」
猛は雅の今の言葉に素っ気無く返した。
「うちのクラスは皆真面目で勉強のことばかり考えてるしね」
「そうなの」
「大体塾だよ。勉強するところじゃない」
それならばだというのだ。
「それでいじめとか暴力とか。あるっていうのもね」
「ないのね」
「まああるにはあるだろうけれど」
塾も人間がいてそれによって形成される場所ならそうしたことがあるのも当然だった。人に悪い面があるのならそれは何処にでも出てしまうものだからだ。
「それでも僕のいるクラスにはないから」
「じゃあ平和なのね」
「うん、凄く平和」
こう素っ気無く雅に答える猛だった。
「何の心配もいらないよ」
「だったらいいけれど。ただ」
「ただ?」
「念の為にね」
苦しそうな、胸が詰まりそうな顔になってだった。
雅は猛の顔を見てだ。そして言ったのだった。
「私も。猛と一緒のクラスに」
「なりたいんだ」
「そう。念には念を入れてよ。確かに猛は二段よ」
空手のことを話に出しながらだ。雅は必死という感じの顔で猛に話す。
「けれど。それでもよ」
「それでもって」
「喧嘩とかできないし。だからよ」
「雅も一緒のクラスになりたいんだ、僕と」
「そうよ。大丈夫かしら」
「雅と僕の成績って総合だとあまり変わらないじゃない」
猛はこのことを雅に話した。二人の成績のレベルは同じ位なのだ。
「それにどっちも文系志望だよね」
「ええ。私は文学部で」
「僕は一応法学部だけれど」
「どうせなら猛も文学部、いえ」
「いえって?」
「私も法学部にしようかしら」
猛の顔を見てだ。そのうえでの言葉だった。
「やっぱり」
「何で?だって雅純文学好きだよね」
「そうよ。太宰とかね」
「じゃあ文学じゃない。それで何で法学部に?」
「ちょっと興味持ったからよ」
猛の顔を見て眉を顰めさせてだ。雅は猛に言った。
「それでなのよ」
「急に?」
「そう、急によ」
言い繕う感じでだ。雅は猛に答える。
「だからなのよ」
「何か話が合わない様な」
「とにかく。同じ文系だから」
雅は返答に困ったのか急にこんなことを言い出した。話を戻してきたのだ。
それでそのうえでだ。こう猛に話したのだった。
「同じクラスになるのもよ」
「普通にあるよね」
「そう。だから私頑張るから」
その必死の顔での言葉だった。
「私は勉強をね。だから猛もね」
「僕は空手で」
「そう。頑張るのよ」
こう言ったのである。
「せめて私に勝つ位ね
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