第五話 愛の寓意その三
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「どうなればいいけれど」
「いいクラスって具体的には?」
「何でもないわ」
具体的なことは言わない雅だった。そうしてだ。
そのうえでだ。雅はまた猛に言った。
「こうして夜道を歩くのってね」
「危ないっていうんだね」
「ええ。猛も気をつけてね」
姉が弟に諭す様な顔でだ。雅は猛に言う。
「悪い奴だっているんだから」
「それは女の子が言うんじゃなくて」
「違うっていうのね」
「男が言うものじゃない。僕が」
苦笑いになってだ。猛は雅に返した。
「そうじゃないかな」
「それはそうだけれどね」
「確かに雅の方が強いけれどね。空手も」
「猛は道場継ぐからもっと修業しないと駄目よ」
諭すものが説教じみたものになった。完全に姉と弟だった。
「今のままじゃ駄目よ」
「駄目って」
「そうよ。私に一度も勝ったことないじゃない」
「雅に勝つなんて無理だよ」
猛はたまりかねた感じの顔と声で雅に言い返す。
「全国大会だって優勝したし」
「それでも男の子と女の子はね」
「力の差があるっていうんだね」
「基礎体力が違うじゃない」
「それはそうだけれど」
「じゃあ私に勝つ位でないとね」
駄目だとだ。雅は猛に強く言う。
「さもないと道場だって継げないし。それに猛の道場は殺陣やスタントマンのお仕事だってするでしょ」
「うん、道場っていっても経営があるからね」
それでそういう仕事も受けているというのだ。
「だからね」
「それじゃあ余計によ」
「身体鍛えないと駄目だっていうんだね」
「強くならないとね」
雅は具体的に猛に話す。
「そうしないと駄目よ」
「殺陣やスタントに強くなる必要あるの?」
「あるというか技を磨かないと」
「そういう意味でなんだ」
「そう。強くならないとね」
駄目だと。雅は猛に説教めいて話す。
「駄目だから」
「ううん。それでなんだ」
「猛だって黒帯で二段だし」
それなりの強さはあるのだ。
「もう少し頑張ったらもっともっと強くなるから」
「これでも頑張ってるんだけれど」
「私に勝てる位によ」
その域にまで達しろというのだ。
「強くならないと駄目よ」
「だから全国大会で優勝した雅に勝つって」
「無理だっていうのね」
「そう簡単にはなれないよ」
「簡単でなくて当然よ。強くなるのは難しいのよ」
まさに姉が弟に言う言葉だった。そんな感じだ。
「だからもっともっとね」
「修業しないと駄目なんだ」
「そう。学校の勉強も大事で」
そしてだ。空手の方もだというのだ。
「両立させてね」
「文武両道?」
「武道家でしょ。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ