第五十六話 犬も太るのでその八
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「やっぱりね」
「そうなのね」
「もうそれはね」
縁はというのだ。
「人じゃね」
「どうにもならないのね」
「もう神様のお仕事で」
それでというのだ。
「人間だとね」
「何にもならないの」
「そうよ、人間が出来ることは少しよ」
「縁のこともどうにもならないで」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「本当によ」
「出来ることは少しね」
「万能の霊長とか自称していても」
「出来ることは少しなのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「結局は小さな葦でしかないのよ」
「海の中の葦?」
「それだけでしかないのよ、小さなものよ」
「それムスリムの娘が言ってるわ」
咲は学園にいるこの宗教の同級生から言われたことを話した、世界各国から人が集まる学校なのでこの宗教の生徒もいるのだ。
「人間はアッラーの前では等しく小さいって」
「そうそう、イスラムはそう言うのよ」
「人間は小さいって」
「お母さんはムスリムじゃないけれどね」
「豚肉食べるしね」
咲は笑って話した。
「実際はアッラーに謝罪したら食べられるみたいよ」
「あとどうしようもない時はよね」
そうした時はというのだ。
「それは出来るけれど」
「その辺り寛容なのね」
「それはあんたもわかってきてるでしょ」
「何となくね、それでイスラムではね」
「そう言ってるのね」
「そうよ、イスラムは平等主義が結構強いのよ」
そうした宗教だというのだ。
「王侯貴族でももの乞いの人でもね」
「同じなのね」
「同じムスリムで」
それでというのだ。
「アッラーは偉大でね」
「そのアッラーの前ではなのね」
「人間は皆小さいの」
そう考えているというのだ。
「もうどんな偉大でもね」
「神様程じゃないのね」
「そうよ、それでお母さんも思うのよ」
「人間は小さなもので」
「その出来ることもね」
これもというのだ。
「ほんの少しよ」
「だから縁のこともなの」
「出来ないのよ」
「そっちは神様のお仕事ってことね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「本当にね」
「そうなのね」
「だからね」
それでというのだ。
「その縁は大事にしなさいね」
「神様のそれを」
「そしてモコともね」
「これからも仲良くしてね」
「家族として」
「大事にしてあげて」
そうしてというのだ。
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