第四話 インノケンティウス十世像その八
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「黒のあれね」
「だからそうだと思うけれど」
「まだ十階でしょ」
「あの階にね」
「そうなのね。何か最近ね」
その事務員は整った顔を少し曇らせて述べた。
「理事長さんのお姿見ないから」
「まあ事務室に顔出すことは少ないわよね」
「塾に来ていてもね」
「十階にいつもいてるし」
「他の階に出て来ることないから」
「私達が御会いすることって少ないわよね」
「副理事長さんもそうみたいだし」
塾のナンバーツーのだ。彼もだというのだ。
「十階に呼ばれることないみたいよ」
「えっ、副理事長さんなのに?」
「弟さんなのにそうなの」
「そうみたいよ。御呼ばれするのはね」
事務員の中の茶色の淡い感じの髪の女が話していく。
「一郎さんと雪子さんだけみたい」
「あのお二人だけなの」
「甥御さんと姪御さんだけ」
「そうなのね」
「そうみたいなのよ。あのお二人だけみたいなのよ」
警備員が十字に話したことをだ。彼女は同僚達に話したのである。無論彼女は警備員と十字のやり取りは知らない。そのうえでの会話だった。
「それでね。お二人はしょっちゅう御呼ばれしてね」
「十階で理事長さんとお話してるの」
「そうなのね」
「そう、私も十階には行ったことないけれど」
その茶色の髪の事務官が言った。
「どうなってるのかしらね」
「私も。この塾に勤めて三年だけれど」
「私は四年よ。それでもね」
「そうよね。あそこに入られるのってお二人と」
「それと理事長さんに呼ばれた子だけ」
「女の子多くない?」
このこともだ。警備員が十字に話したことだった。
「というか女の子ばかりみたいな」
「そういえばそうかしら」
「小学生から予備校生まで色々だけれどね」
「女の子ばっかり?」
「そうよね」
このことにだ。彼女達も気付いた。しかしだった。
その彼女達のところにだ。整ったスマートな外見の壮年の男が来た。白いものも見える黒髪は丁寧に後ろに撫で付けられアイロンがかけられたスーツを着ている。顔は皺が顔を引き締めさせている感じで頭と顎が四角い面長である。その彼がだ。
事務員達のところに来てだ。こう言って来たのだ。
「今度の日曜の中学コースのテストのことだけれど」
「あっ、副理事長さん」
「あのテストのことですか」
「うん、答案はできてるかな」
こうだ。この塾のナンバーツーである若田部真澄は事務員達に問うたのだった。
「講師の人達から聞いてるかな」
「はい、さっき全部頂きました」
「全教科完成しています」
「そう。それはよかったよ」
そう聞いてだ。若田部もだ。笑顔になりだ。彼女達に言った。
「
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