第四話 インノケンティウス十世像その四
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「けれど僕はね」
「警備員さんもですか」
「入ったことはないよ」
そうだったというのだ。
「もっと言えば入れてこともないんだ」
「警備員さんもですか」
ビルの管理と警備を任されている筈なのにだ。それでもだというのだ。
「それでもですか」
「そうだよ。副理事長さんもだし」
「先程のお話通りですか」
「本当に十階は謎の階なんだ」
「勿論塾生もですね」
「ごく一部の子だけだね。いや」
ここでだ。警備員はだ。ふとあることに気付いてだ。
そのうえでだ。十字にこう答えたのである。
「娘かな」
「女性の方だけですか」
「うん、十階に入れてもらえるのはお二人とね」
そのだ。一郎と雪子の二人以外にはだというのだ。
「小学生から予備校生まで様々だけれど女の子ばかりだね」
「左様ですか」
「男の子はいないね」
このことと十階の話を聞いてだ。十字はだ。
そのことからかなり怪しい、尚且つ碌でもない事実を確信した。しかしだった。
警備員はやはり気付かずにだ。そのうえでだった。
十字にだ。こう話していくのだった。
「それでどうかな。この塾だけれど」
「入塾のことですね」
「うん、どうするのかな」
「前向きに考えたいと思います」
表情はない。それは真意を隠してのことだ。
だがここではだ。こう言ったのである。
「家の方でお話をして」
「そうして決めるんだね」
「ですが多分入塾させてもらうことになります」
それはだ。ほぼ確実だというのだった。
「では」
「じゃあその時はね」
「宜しくお願いします」
下見を済ませてだ。それからだった。
十字はその日は教会に入った。そのうえでだ。
礼拝堂において神父と向かい合いだ。そのうえで話すのだった。
「悪を見つけたよ」
「やはりこの町にもですか」
「うん、悪はいるね」
それがいると述べてだった。
「間違いなくね」
「左様ですか。では」
「確めてからになるね」
まだ動かないというのだ。確かなものがない限りだ。
「それはね」
「ですか。では今は」
「調べることからだね。それにしても」
「それにしてもですか」
「事実を知っているのは神だけだから」
それでだというのだ。
「僕はそれを後で見せてもらうから」
「事前に知ることはですね」
「人にはできないよ」
それは無理だというのだ。十字はこのことは残念そうに述べた。
「悪は表に出てこそ悪となるのだから」
「その心にあるうちはまだ」
「裁かれるものじゃないからね」
そうしたものだというのだ。悪はだ。
「人は誰でもその心に悪がある
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