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八条学園騒動記
第六百六十一話 朝に思うことその十二

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「同じ種類の食べものでもじゃ」
「食べられないんですね」
「昔は白米はお公家さんが食しておった」
「それで庶民は玄米とかですか」
「雑穀をかなり入れたな」
「そうだったんですね」
「そして鎌倉武士はな」
 その彼等はというと。
「玄米であった」
「それを食べていたんですか」
「白米を姫飯と言ってな」
「柔らかいからですね」
「それで玄米を強飯と呼んでじゃ」 
 そうしてというのだ。
「お碗に塔の様に盛ってじゃ」
「食べていたんですか」
「古典の絵である様にな」
「そういえばそうして食べてますね」
 野上君も言われて思い出した。
「平家物語とかでも」
「当時の武士はな」
「じゃあ栄養は大丈夫だったんですね」
 鎌倉武士はというのだ。
「脚気にならなかったんですね」
「他には獣でも野菜でも何でも食っておったしな」
「江戸時代とは違って」
「左様、勿論海や川の幸も食ってな」
 そうしてというのだ。
「狸や猿もじゃ」
「食べてたんですか」
「味噌は高価で味噌汁はなかったが」
 当時はまだそれはなかった。
「けんちん汁や石狩鍋の様なものを食べておった」
「そうでしたか」
「わしも食ったが美味かった」
 博士は自分のことも話した。
「よく食った」
「美味しかったですか」
「当時はな、醤油もなかったが」
「当時は」
「滅多にな、あってもあれじゃ」
「あれといいますと」
「しょっつるじゃ」
 醤油は醤油でもこちららだというのだ。
「それであった」
「当時は」
「これはこれで美味いな」
「ナムプラーですからね」
「そうであったが」
「大豆のお醤油はですね」
「なくてな」 
 それでというのだ。
「今の和食とはじゃ」
「違ったんですね」
「そうであった」
 こう野上君に話した。
「当時の料理はな」
「そうでしたか」
「まず醤油がないのじゃ」
 博士はハムを食べつつ話した。
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