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八条学園騒動記
第六百六十一話 朝に思うことその十一

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「飢饉の時も白米を食っておった」
「その時もですか」
「玄米の方が栄養があるとわかっていてもな」
「それでもですか」
「脚気の原因は不明じゃった」
 今話した通りにというのだ。
「そうであったが玄米に栄養があることはわかっておった」
「飢饉の時も栄養が摂れると」
「それはわかっておったが」
 それでもというのだ。
「どうしても喉を通らずな」
「食べられなくて」
「それでじゃ」
 そのうえでというのだ。
「敢えて白米にして食っておった」
「玄米をですか」
「そして食ったが」 
 それでもというのだ。
「飢饉で栄養失調でな」
「白米だけで他に食べるものがなくて」
「それで栄養が足りずじゃ」
「死んだ人がいたんですか」
「そうであった」
「そんなこともあったんですね」
「天保の頃だったか」
 博士はその飢饉の時代も話した。
「確かな」
「天保の大飢饉ですね」
「その頃にはそうした話もあった」
「玄米が食べられなかったんですか」
「特に江戸ではな」 
 この街ではというのだ。
「江戸っ子が玄米なんて食えるかとかな」
「そうも言っていたんですか」
「そうであった」
「そんなことがあったんですね」
「麦飯を食えば脚気にならぬが」  
 海軍そして森鴎外医師としては本名の森林太郎である彼に見切りをつけた陸軍がそうしたことを見てもわかる様にだ。
「玄米でもじゃ」
「脚気にならないですね」
「今は白米でも普通に栄養があるな」
「玄米と同じだけ」
「そう品種改良されているが」
 それでもというのだ。
「当時のお米はじゃ」
「白米は澱粉だけで」
「他に栄養がなくてな」
「それだけだと脚気になって」
「飢饉の時は栄養失調で死んだ」
「そうだったんですね」
「食べ慣れておらんとな」
 そうしたものはというのだ。
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