第二十六章 夢でないのなら
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そこは真っ暗な、闇の中であった。
僅かな光源すらも存在しない、漆黒の、闇であった。
だけども、視えている。
周囲の物が、そして、自分の身体が、視えている。
認識出来ている。
それはとても、不思議な感覚であった。
不思議といえば、自分のことだ。
自分は一体、ここでなにをしているのだろう。
ずっと目は覚めていて意識はあったはずなのに、ふと気付けばここにいた、という気もする。
ずっと眠り続けていて、たったいま目覚めたばかりのような気もする。
ここは、どこ?
何故、ここにいる。
分からないけど、では、さっきまで自分は、どこにいただろうか?
そういえば、さっきもこんなところにいた気もする。
こことは違うけど、こんな、光のない部屋の中にいて、でも何故か物が見えていた、気がする。
魔力の、目?
ここもそこと同じで、やっぱり光なんかまったくなくて、わたしが魔法使いだから、魔力の目があるから、こうして見ることが出来ている?
待って……
わたしは、戦っていなかったか?
さっきいたかも知れないという、その闇の部屋で、わたしは。
誰と?
なんのために?
わたし、頭を打ったのだろうか。
とても大切なことを、すっかり忘れている気がする。
なんか、いやな夢を見ていたな。
わたしが、身体を細切れにされてしまうんだ。
首だけにされてしまうんだ。
何故だが分からないけど、味方の剣で。
いや、戦っているんだから味方じゃないんだろうけど、とにかく魔法使いに。
それどころか、カズミちゃんや、治奈ちゃんが、どろどろに溶けてしまって。
……同じように溶けて液状になっている無数のヴァイスタに、食べられてしまうんだ。
「あ、あっ、あれっ?」
素っ頓狂な声。
自分の声であった。
ふと視線を落とした時に、自分の服装に気が付いて、びっくりしたのだ。
みんなと遊びでお出掛けする時のような、私服姿なのである。
ティアードブラウスに、膝丈タータンチェックのプリーツスカート、薄桃色の靴下。
だからどうした、ということではあるのだが。
でもこの服装が、なんだか違和感であった。
記憶がぼーっとしているわけだから、自分が現在の状況を理解していないだけであり、こんな姿でいても別に不思議ではないのだろうが……
ぐるりと、また周囲を見回す。
視界に入ってはいたけれど、あらためて部屋の中を見回す。
やっぱり、不思議だ。
こんな奇妙な造りの部屋で、遊び着姿でぼーっとしているだなんて、どう考えても不自然ではないか。
そう、
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