第二十四話 あえて聞いたその十五
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「昔からね」
「そうなのよね」
「まああの国はかなり特殊な国だから」
それ故にというのだ。
「八条学園にもよ」
「人が来てないのね」
「今言った通りの国だから」
「仕方ないわね」
「あの国だけはね」
北朝鮮だけはというのだ。
「仕方ないわ、あんたも行けないしね」
「あの船で行くの?新潟から」
「今あの船出てないでしょ」
「そうなの」
「もうないんじゃないかしら」
「万何とか号とか言ったけれど」
かな恵はこの船の名前を少し忘れてしまっていた、かつてこの船に乗って日本から北朝鮮に多くの者が戻り一人も帰って来なかった。
「あの船もうないの」
「あっても動いてないでしょ」
「そうなの」
「随分昔の船だしね」
それでというのだ。
「日本と北朝鮮仲悪くなったから」
「それでなのね」
「もうね」
今はというのだ。
「動いてないでしょ」
「そうなのね」
「中国から行けるらしいけれど」
「そこまでして行くもの?」
「行こうと思えばね」
「そこまでして行こうとはね」
中国から行けば遠回りになる、それでかな恵はこう言ったのだ。
「思わないわ」
「お母さんもよ、そこまでして行ってもね」
母も言った。
「見たいものないでしょ」
「食べたいものもっていうか」
「あの国食べるものないわよ」
「そうよね」
「見るものだってね」
これもというのだ。
「パレードと銅像位よ」
「どっちもどうでもいいわ」
かな恵にしてはだ。
「正直言って」
「そうでしょ、だからね」
「行くことはないのね」
「それであの国の人はね」
「そうした理由でうちの学校にもいないのね」
「一人もね」
「そうなのね、まあそれは仕方ないわね」
別にいいという口調で述べた。
「あの国については。ただね」
「ただ?」
「私北朝鮮に生まれなかったこともよかったと思ってるわ」
「食べものないからね、あそこは」
「お母さんが今言った通りにね」
「いつも餓えることになるわよ」
「太るのも嫌だけれどそれも嫌だから」
食べるものがない状況もというのだ。
「それにあそこちょっとしたことで粛清よね」
「家族皆ね」
「それか収容所行きだし」
独裁対象地域という、収容所どころか地域である。
「そんな国にはね」
「生まれなくてよかったわね」
「若しあそこに生まれたら」
そうなればというのだ。
「それだけでね」
「不幸よね」
「究極の外れじゃない」
かな恵はこうまで言った。
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