第67話 燃やされるモノ
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うか……
「……なんて酷いピクニックだったのか」
どんどんと小さくなっていく要塞の姿を見ながら俺がそう呟くと、ジャワフ少佐も体を俺の方に傾けて同じように窓から要塞を見て応えた。
「確かにピクニックならもう少し真面目にやった方がいいかもしれませんが、けが人もなくキャンプファイヤーで終われそうですから、まずまずではないですかね」
嫌味というよりは適当な相槌と言った感じで、そうジャワフ少佐は肩を竦めるのだった。
◆
ボーデヴィヒ要塞への武装配備が終了した五月二五日〇九〇〇時。俺とジャワフ少佐は、要塞から五〇〇キロばかり離れた渓谷の一つエル=カフェタルに作られた、地上軍野戦総司令部に身を置いていた。
実を言うと空いた時間で司令部を作るのを手伝おうと思ったのだが、戦闘服を着た地上軍の将兵がテキパキと作業している中では、部外者がいても邪魔なだけと判断して、爺様とディディエ少将の双方に許可をとって、もう一つの任務であるエル=ファシル各都市へ被害状況確認の為、俺はジャワフ少佐と共に車上視察(ドライブ)や空中偵察(遊覧飛行)に同乗していた。
三都市とも上空から一見すると被害はまるでない。比較的高層の建物の屋上や、住居地域の中でやや開けた場所に対空陣地がそれなりに隠蔽設置されたり、幹線道路の一部を意図的に破壊して対装甲車両用の歩兵陣地があるところを見れば、レッペンシュテット准将がここに立て籠ったままだと苦戦しそうだったなと、改めて認識せざるを得なかった。
インフラと言えば、都市機能を維持する基本的な設備の使用はしていたようで、核融合発電所も浄水場も言葉に悪戦苦闘しつつ工兵隊らしき部隊によって維持管理されていたようだ。もっとも需要側である住居地域や商業地域はものの見事に荒らされていたので、あんまり意味はないのだが。
「市街に死体がなかったのが幸いですね」
「そうですな。あれは視野に入るだけで本当に気が滅入ります」
迷彩色の投影パネルやら、視野に入るだけで両手両足の指より多い通信機器の間を、地上軍の将校達が忙し洋に動き回るのを、俺とジャワフ少佐は部外者と言わんばかりに、相変わらず紙コップで珈琲を飲みながらパイプ椅子に座って後ろの方から眺めていた。
「ボロディン少佐は敵兵の死体を見たことはありますかな?」
「前の任地で。討伐中の宇宙海賊でしたけど」
「あぁ、それは良かった」
「良かった?」
「そう気を悪くせんでください。宇宙軍の、特に後方勤務出身の比較的年齢が若い将兵は、死体を見るだけで動けなくなるのです」
俺の口調がキツイものだとすぐにわかったのだろう。ジャワフ少佐は恐縮そうに奇妙に細く整えられた眉を伏せて応えた。
「かくいう私もそうでした。今でも忘れもしません。地上軍少尉
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