第67話 燃やされるモノ
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とは出来そうにない。
「そこまでご覚悟されていながら、何故」
「最初から宇宙空間に出た時点で巡航艦を乗っ取ってやろうとは思っていたから、卿に最低限の装備を携帯することを願ったわけだが、断られてね。しかもなかなか堂に入った青年貴族ぶりだったから、本当に皇太子殿下がご下命を下されたのかもしれないと逡巡してしまった」
「……」
「だが私が乗った巡航艦の艦長……フィンクス中佐と言ったかな。彼の卿に対する絶対的な忠誠心が、私には疑問だった。温和で良識的な領主貴族も、それに忠誠を誓う累代家臣もいないわけではないが、卿の絶妙なバカ殿ぶりを見るとね」
そこで階級差を見せつけて巡航艦の艦橋へ、自分一人で作戦に口を挟まないという条件で立ち入り、戦況を確認して驚いた。救出作戦自体が偽装であろうと確信していたとはいえ、星系外縁部での陽動戦闘、内惑星軌道上で作成された偽装艦隊の動き、そして巡航艦艦橋のメインスクリーンに映る『救出艦隊』側の不利とはいえ整然とかつ戦理に則った戦いぶり……
「こうなると余程手練れの臨時参謀が付いているとしか思えなかった。近衛の艦隊は少数だがそれなりに腕の立つ船乗りが居るのは聞いていたからね。だが卿の傍には、参謀も副官すらもいなかった。そして私が卿と握手をした時、艦長やオペレーター達の殺意が上がったのが分かったから確信した」
「あの場で小官を殺そうとかお考えにはならなかったのですか?」
ゼッフル粒子発生装置さえあれば、あの時の准将ならば艦橋を制圧することができたんじゃないか。戦闘装甲服を着ていた一〇人も、俺の合図がなければ出ることは出来ない。
「あるいは小官を人質にとって、司令部と交渉するとか」
「卿を人質に取ったところで、部下達の安全は保障されない。卿を殺せたとしても私が無傷であるとは言いきれないし、そうなれば巡航艦ごと私の部下は燃やされる。エル=ファシルの地上を離れた時点で、我々の未来は決まっていた」
「……」
「卿は部下を出世とかの私欲で殺すような男ではない。それどころか窮地にある敵の命すら救おうと考える男だ。そういう結論に至って、抵抗は無意味と判断した」
ハハハハと乾いた笑いを准将は見せた後で、大きく溜息をついた。
「おかしなものだ。この星域で最も帝国軍将兵の命を大事にしていたのが、私を含めた帝国軍上級指揮官ではなく叛乱ぐ……同盟軍の中級幹部だったということが」
「はぁ……」
「卿は帝国に産まれなくて良かったな。例え門閥貴族の家に産まれたとしても、長生きはできまい」
それは、そうだろう。俺はレッペンシュテット准将にいろんな意味で同意した。俺が身分制の無いそれなりに平和な時代を生きていた転生者であることなど准将は知る由もない。それに若干のイレギュラーがあるにせよ物語はそれなりに順調に進ん
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