第67話 燃やされるモノ
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んなこちらに向けて艦尾を向けているが、埋まっていない部分だけでも巡航艦は八〇メートル以上。戦艦なら一四〇メートルの高さがある。金属と有機化合物で作り上げられた二〇階建てないし三〇階建てのビルの壁がぐるっと周囲を覆っているようなものだ。これが宇宙空間ではスパルタニアンの一斉射でこれが燃え尽きると考えると、実に不思議で違和感がある。
「おお、来たか」
城壁を構成する戦艦の一つ、戦艦マスバッハの艦橋に入れば地上戦部隊の司令部が勢ぞろいしていた。だが俺とジャワフ少佐が艦橋に入っても、最初に気が付いたのがディディエ少将と、第三二装甲機動歩兵師団のミン=シェンハイ少将、それになぜここにいるのか訳が分からないレッペンシュテット准将の上級者三人で、ほかの中級・下級指揮官達は野戦用の折り畳み机を三〇個ばかり連結させ、無造作に図面を開き、数人の帝国軍人も交えて激論を交わしている。こちらに気が付いてはいるんだろうが、敬礼する様子もない。
「どうだね。宇宙軍から見たボーデヴィヒ要塞は」
ディディエ少将がゴリラで、レッペンシュテット准将がキツネなら、この人は血統上のご先祖様から考えてパンダだなと思わせるミン=シェンハイ少将のワクワクした問いかけに、俺は正直に応えた。
「軍艦をこういうふうに使われるとは考えておりませんでしたので実に驚きましたが、ネーミングライツとか頂けるのでしょうか」
「差し上げたいのはやまやまだが、金銭的な余裕はなくてね。そこの誰も座りたがらない艦長席のソファなら、持って行ってくれて構わないよ」
本国の好事家ならきっといい値段で売れると思うよ、と嬉しそうに少し大きめの腹を叩きながらミン少将は言うと、視線だけでレッペンシュテット准将に何かを促した。それに准将は無言で頷き応じると、准将は俺とジャワフ少佐に、少し外の空気を吸いたいので付き合って欲しいと言って、艦橋から外装最上甲板まで連れだした。
「改めて卿には礼を言いたいと思ってね」
隣接する巡航艦との鋭角二〇度くらいの隙間に掘られた掩体壕へ、同盟軍の手で帝国軍の装甲戦闘車が押し込まれていくのを眺めながら、レッペンシュテット准将は言った。
「お礼と申されましても、小官は結果として閣下を騙したわけですが」
「最初から半々で疑っていたよ。帝国軍は平民出身の将校や兵を救う為に大規模救援作戦を計画することはまずない。卿がシェーニンゲン子爵らを連れ出した段階で、我々はもう捨石だったんだ」
四万人にも及ぶ地上戦力を『捨石』にできるという非人道性。しかし宇宙空間での戦いでは約三〇〇〇隻、三五万人の命が失われていることを考えれば、『この世界』においては四万人程度捨石にしても特に問題ではないということ。この世界に産まれて恐らくたぶん死ぬまで、俺はこの現実を『常識』として受け入れるこ
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