ガンバルクイナ
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て欲しいことはあるけどね」
ハルトの紹介に、響は「どーもッ!」と元気に手を上げた。
だが、その話が続けられるよりも前に、医者が手をだして中断する。
「先に診断をさせてください。お話があるならばその後に」
医者はそう言い、ハルトと少年の間に立つ。彼はそのまま少年を寝かしつける。
「容体はどうですか?」
医者はサングラスを外し、ポケットに収納する。
少年の体に検査機を当て、他にも何度も触れ、容体を確かめていく。
「……何も問題ないでしょう。もし何かあれば、ご連絡いただければと」
医者はそれだけ言い残し、立ち去る。彼がそのまま事務所に入っていったのを見送り、ハルトは首を傾げた。
「ええっと……何かお礼とかした方がいいのかな?」
「さっきちょっとだけ話したんだけど、そのまま帰っていいって言ってたよ。……でも」
響は眉をひそめながら、アンチへ振り返る。
「ねえ、君どこから来たの? お父さんやお母さんは?」
響がしゃがんで、アンチよりも低い目線で語りかける。
アンチはしばらく響を見つめ、やがて口を開いた。
「……アイツを、探している」
「アイツ?」
「ムーンキャンサー……」
「ムーンキャンサー? 何それ?」
響が首を傾げながら、アンチに顔を近づけた。
「……俺も、分からない。とにかく、俺はムーンキャンサーを探している」
「分からないものを探している? なんで探しているのかな?」
「分からない……俺は、そう命令された。だから探してる」
「命令?」
こんな小さな子が? と、ハルトは疑問を浮かべた。
それよりも先に響がハルトに振り向いた。
「ねえハルトさん、ムーンキャンサーって何だろ?」
「直訳すると……月の……蟹座? 何かのモノかな?」
「モノ?」
「たとえば、思い出のキーホルダーとか。多分、月とか蟹の形をしたものなんじゃない?」
アンチが探しているものを推論している間にも、アンチはローブを纏い直す。
そのまま窓から病室を抜け出そうとするアンチ。
「待ってッ!」
だが、そんな彼の手を、響が掴んだ。
「探し物だったら、わたしたちも手伝うよ? ね、ハルトさんッ!」
「え? 俺、蒼井晶を探したいんだけど」
「でも、この子のことだって放っておけないよ?」
ハルトと響の意見が食い違っている。
その間に、アンチは響の腕を振り払い、そのまま窓の外へ走り去っていく。
「あッ! 待ってッ!」
「いや、響ちゃんこそ待ってよ!」
だが、ハルトが呼び止める間もなく、響もアンチを追いかけて出ていった。
「ああもう……あの子も気になるし、でも蒼井晶を追いかけたいし、一体
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