第二章:空に手を伸ばすこと その四
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いなぁ・・・」
「まぁ、お前の場合はアレがあるからな・・・」
仁ノ助は苦笑いを浮かべて軍の先頭で馬を進める夏候惇を見る。その背に担がれた幅広の大剣、七星餓狼はそれを背負う物の力強さを象徴している。
(比較対象があれじゃ形無しだよ)
無論クレイモアとて充分に強力な武器である。片手で両手剣を振るうことにも強靭な体が必要であり、それが出来る仁ノ助は充分に鍛え抜かれたことが分かる。
ただし夏候惇も七星餓狼を片手で振れる。あれは見た目に反せず非常に重量がある武器であり、一振りするだけで轟音を立てて空気を震わす業物である。クレイモアが人間を両断するに留まるのに対して、この武器は人間の肉体に当たってしまえばたちまち肉片となって体が四散することだろう。
武器が起こす結果が違うのであれば比較の仕様も無い。
「言っておくけど、アレは例外中の例外だからな。真似しようとするなよ?」
「無理ですって。俺はまだ人間でいたいし」
さりげなく夏候惇を人間として扱ってないことを露呈しつつ、曹仁は自分が片手で担ぐ戟に目をやった。詩花が持つそれよりも二寸は長く、また武器の質も良い。敵の血を多く吸うことになろうとも簡単には刃の通りを鈍らせないだろう。
「ふふふふ、私の七星餓狼が血に飢えているぞ・・・・・・!!あああ戦が待ち遠しい!!!」
「時に落ち着け将軍、まだ六刻はかかるぞ。」
半日先の血飛沫に早くも飢え始めている夏候惇を諌める。夏候淵はいつもこんな感じで止めているのだろうか、しかも愛を持って。自分とは違う次元に生きる人間達が次々と出て来る現実に対して早くも疲れてくる。
その点、曹仁はとても普通な人間で安心する。彼にはこの思いが分からないだろう、いや分かってほしくない。そんな思いを抱きながら曹仁を生暖かい目で見る。
「・・・がんばれよ」
「?」
首を傾げる彼の姿は歳相応の若々しさを見せており、思わず可愛くみえてしまったのは内緒である。
「・・・・・・この期に及んで一体どういうつもりだ?」
日が夜に差し掛かっている。太陽の赤光が仄かに空に血の色を想起させる赤を残している。嵐の前の静けさを醸し出す長社の黄巾陣営。
その中で波才は張角の使者として使わされた黒ずくめの服を着た男を睨む。その男はこちらの問いを全く気にしていないかのように、これまでの略奪で奪ってきた品々に興味深そうに、ふてぶてしく目を向けている。
「どういうつもりもないだろう?態々俺が出向いてやったのに可笑しな奴だな。・・・うん?これは・・・避妊具か?」
「・・・それはただの玩具だ。で、さっさと俺の質問に答えろ。何しにきた?」
親切にも略奪品の解説をする男に思わず微笑し、黒ずくめの男は手に持った愛玩具を弄
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