暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦 その3
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が眠っています。
各惑星のハイヴを排除したら、G元素の確保はダメになるでしょう」
 誰かが彼のうしろで、大いに笑った。
「そこで、何をしていた」
 振向いた白銀は、そこにいたマサキを見て、一瞬、驚きの色を示す。
彼は、なお笑って、マサキの方に歩み寄る。
「これは、木原先生」
 マサキは、そこにいた白銀を見て、むッと、眼にかどを立てる。
ふざけたことをいうと許さんぞと、いわぬばかりな威を示した。
「俺に、何か用か」
「実は、その……インド軍の動きが、妙に気になりまして……」
「何か、企んでいるのか」
「反政府派のタミル・イーラム解放の虎(LTTE)がテロを予告しているのに、インド軍の警備大隊以下、全く動きがないのです」 
 モルディブは独立以来、自前の戦力を持たなかった。
それ故に、友邦であるインドとの間に安保条約を結んで、駐留軍を置いていた。
国土防衛の他に、海難救助などをインド軍にほぼ依存する形となっていた。
「じれったいな」
 鎧衣は、眉をひそめて、なお凝視(ぎょうし)しつづけていた。 
一方、マサキは、なおも(ただ)した。
「早く結論を言え!」
「ええ、つまり防備手薄な、このモルディブの会見場を一気呵成に攻める肚かと……」
マサキは、口を極めて怒りをもらした。
「お前の推測か!」
「は、はい。そうですが……」
「裏付けもなく、下らん推測……いちいち報告するな!」
マサキは不敵に笑った後、呟く。
「俺は、忙しいんだ!」
「すると、何か計画を……」
白銀が問いただすと、マサキは得々とその内容を打ち明けた。
「夢と温めてきた、史上最大の作戦だ」
マサキはすべてが、万全であるかのように誇って話した。
「史上最大の作戦ですか……」
 ふたりは、もう何もいうことを欲しなかった。
そんな彼らの姿を見たマサキは、大喜悦である。
「今にわかる。フハハハハ」
 鎧衣は、待つ間ももどかしそうであった。
彼には何か思いあたりがあるらしく、胸騒ぐ心の影は、眉にもすぐあらわれていた。


 空港に呼び出された参謀総長の前に、黒い高級セダンが勢いよく乗り付ける。
BMW2002ターボのドアが開くと、後部座席から、将官用勤務服(キーチェリ)を着た初老の男が二人。
助手席からは、腰まである銀髪をゴールデン・ポニーテールに結った熱帯服姿の婦人兵が下りてきた。
「手こずっておる様だな」
「同志大臣、何の用ですか」
 ソ連側も無策ではなかった。
日本側に譲歩の姿勢を見せる赤軍参謀総長を叱責するために、国防相と次官が乗り込んできたのだ。
「交渉に入るために、サハリンから全軍を引き揚げさせるそうじゃないか……」
「仕掛けもなしに、兵を下げる馬鹿がいるとお思いですか。
冗談も休み休みにしていただきたい
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