暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦 その3
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の海で泳いできたばかりで、水着姿だった。
マサキはトランクス型の海水パンツで、美久は朱色のUバック・ワンピース型水着。
「心得ております……
日本政府とともに、作戦準備に万全を期しておけば……」
 ジャグジーから出て、グラスをテーブルに置こうとした時だった。
いきなり背後から、マサキが強い力で抱きしめる。
「あ……」
 不意打ちだったから、思わずふらついて、グラスをジャグジーの中に落とした。
コテージの中は暗い。
空の月のほのかな光が、カーテン越しに入ってくるぐらいで、やっと物の識別ができる程度だった。
 体の向きをかえられた美久の唇に、マサキの生暖かい唇が押し付けられる。
ほとんど唇の感覚が失われかけた時、マサキはようやく唇を離した。

 マサキの話は、こうだった。
彼はソ連との交渉が始まる前に先んじて、火星を極秘調査することにした。
 月面攻略作戦の前までに、火星にあるハイヴから着陸ユニットが飛来しないとも限らない。
危険性を除去するために、火星にある500のハイヴを調査し、破壊することにしたのだ
 一応、日本政府の協力の元、火星調査衛星ということで、探査ロボットを送り込むことにした。
だが、日本政府内にはマサキの独断行動を面白く思っていない人物も多い。
彼の動向は、反対派を通じ、潜入したGRUやKGBのスパイによって漏洩し続けているのは確か。
 そこで、ある一計を思いつく。
既に篁とミラが完成させていった、月のローズ・セラヴィ。
その機体を、グレートゼオライマーの代わりに火星に派遣するという案である。
 だが、パイロットがいない。
生体認証で動く八卦衆のクローン人間もいないし、マサキ自身もソ連を欺くために日ソ交渉の場に出なくてはいけない。
代理のパイロットに、篁や巖谷を乗せるほど、彼らを信頼したわけでもない。
 ではどうするのか。
ローズセラヴィーのパイロットだった(りつ)をそっくりそのままコピーすればいい。
そういう事で、マサキは大急ぎで、葎の記憶を入れたアンドロイドを作ることにしたのだ。
「ソ連の目を、なるべくこの俺に向けておくのだ。
火星での作戦を悟られないためにな……フハハハハ」
 昂る激情が、抱擁となる。
マサキは優越感に浸り、勝利を確信した。


 マサキの真意は、依然なぞのままだった。
百戦錬磨のスパイである鎧衣や幾度となく死地を潜り抜けてきた白銀にもわからなかった。
そんな彼らは、護衛を務める近衛第19警備小隊に代わって、平服で歩哨を続けていた。
「分かりません、全然わかりません」
「え、何が……」
「木原先生の考えですよ」
 鎧衣は、半信半疑の体であった。
固持する自己の公算からも、割りきれない面持(おもも)ちなのである。
「ハイヴには膨大なG元素
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