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冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦 その3
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重用なさるなんて、御剣公も人を見る目がないな……
 榊は、マサキをふと軽んじるような念を抱いた。
だが、いつか国防省内で、大臣からねんごろに諭された言葉を思い出して、
『いやそう見ては、自分こそ、人を観みる目がない者かも知れぬぞ』
すぐ、自己を(いまし)めて、奥に下がっていく将軍の姿を見送っていた。


 その頃、モルディブの日本側宿舎では。
御剣雷電が、随行員たちと密議を凝らしていた。
「雷電さま、なぜ木原などという怪しげな学者にこれほどまでに肩入れをなさるのですか」
 紅蓮(ぐれん)の声は詰問調になっていた。
しかし、御剣の答えは、意に返さない風だった。
「よい機会だ。貴様らにも言っておこう。
政府は本物の戦力を欲している。実戦経験を持ち、堂々と海外派遣できる存在だ」
 即座には、御剣の意図するところが分からなかった。
分からないまま見返せば、御剣は満足な笑みを浮かべていた。
「しかし、冷戦という国際情勢と、現行の安保条約の(もと)では不可能だ。
帝国陸海軍というおもちゃの兵隊は、何時まで経ってもオモチャの兵隊なのだ」
 驚いたらしい。
側仕えの紅蓮と神野(かみの)は、さらに御剣の顔を凝視していた。
「天のゼオライマーというマシンと、無限の可能性を持つ次元連結システム。
今回の支那からの連絡は、渡りに船だった。
ただし本当に一個大隊並みの戦力なのかは、実戦に投入して見ないとわからないがね」
 老獪(ろうかい)な政治家である御剣は、ゼオライマーの利用価値は買っていた。
だが、木原マサキという人物を買ってはいなかった。
 既に、マサキは利にうごく人間と、御剣すら見ているのである。
いかにこれへ厚遇を約束しておこうと、戦いが終れば、後の処置は意のままにつく。
「それに、今の木原は、政府の正規職員だ。
日本政府にとって、こんな都合の良いことはない。
もし奴の身に何かがあれば、ゼオライマーを合法的に接収できるのだからな」
「……!」
 そこまで言われれば、紅蓮たちにも飲み込めた。
飲み込めはしたものの、余りにも衝撃的な意図に困惑するばかりであった。


 御剣が、内にある野望を語っていたころ、マサキもまた美久と歓談をしていた。
彼は、コテージに備え付けてある、長椅子に座りながら、コーラを飲んでいた。
意味ありげにほくそ笑んだ後、ジャグジーバスに入る美久の顔を見る。 
「美久よ、今度の作戦に失敗は許されんぞ」
 満足そうにつぶやき、再び、コーラの入ったグラスで唇を濡らす。
それから、ふいに長椅子を立った。
美久を手招きして、言ったのである。
「だが、混乱を避けるためには、絶対に秘密は守れ」
 そう言いながらマサキは、ゆっくりと、ジャグジーの中に入ってきた。
二人ともモルディブ
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