第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦 その2
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彼は、自らの信念を打ち明けることで、大きな歓喜を、その声にも、満面にも現した。
「南アジア最大の戦場で、暴れまわるのは、俺の夢。
何としても、ゼオライマーの力をみてほしい」
マサキは、爆発寸前の印パ関係を煽り立てるような語気で、なお言った。
すると男は、皮肉な笑みをたたえながら、早くもマサキの来意を読んでいた。
「それは心強い限りです。
ところで、ちょっと厄介な事が有りまして……」
「厄介な事?」
「時間がありません。
詳しいことは、道々話しましょう」
車中、マサキは大統領から詳しい話を聞いた。
男の言う厄介ごととは、印パの領土問題である。
両国の関係は、再び悪化の様相を見せ始めていた。
BETA戦争以前からある、カシミール問題が再燃しつつあったためであった。
インドへの膨大なソ連からの軍事支援に対し、米国の行動は早かった。
隣国パキスタンに対して、米国議会は核技術の輸出を正式に許可。
その内容は、遠心分離機、ウラン、パーシング2ミサイルの設計図面等である。
既にパキスタンは、中共に核技術の提供を受け始めていた。
今回の米国議会の輸出許可は、それを追認した形となった。
マサキたちがパキスタンに来た理由は、今回の会談に先立つものである。
日ソのエネルギー交渉は、インド洋に浮かぶ島国モルディブで行われることとなった。
それに合わせたかのように、ソ連外交団はインド入りしていた。
親善訪問の名目で、ウラジオストックから大艦隊、約30隻。
太平洋艦隊旗艦、ソビエツキー・ソユーズと複数の軍艦で、ほぼすべてがミサイル巡洋艦だった。
特に目を引いたのが、新造艦であるソビエツカヤ・ウクライナである。
全長399メートル、最大幅35メートル、最大船速38ノット。
Ka-25を2基、露天係留し、戦術機も分解状態なら1機搭載可能だった。
最新式の防空レーダーMR-710「フレガート」に、主砲として20インチ砲12門。
対空火器としては、AK-630自動機関砲24基、短SAM54基。
S-300の艦艇用は未開発の為、搭載されなかったが、恐るべき火力投射力を持つ戦艦であった。
しかも、最新式のOK-900A原子炉という加圧水型原子炉を3基装備していた。
推進装置として、スクリュープロペラを5軸備えていた。
この艦は、ソビエツキー・ソユーズ級2番艦で、建造中にドイツ軍によって接収、後に破壊されたはずだった。
しかしBETA戦争の非常時ということで、世界初の原子力戦艦として蘇ったのだ。
インドは、ソ連の最新戦艦の寄港に沸いていた。
インドの首相は、シェルワニという民族衣装をまとって、すぐムンバイ港へ出迎えた。
見れば、ソ連外交団の車は、儀仗を持った数百名の衛兵にかこまれ、行装の
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