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冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦
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トルもあり、タンクの背面には何やら連結器のような物が見えた。
「農薬噴霧器ではない。
俺が作った、真空でも使える新型の火炎放射器だ。
最大有効射程は、3キロメートル、タンクの最大容量は、240000ガロン。
ファントムの内部タンクは、2000ガロンだから、約20機分だ」
(240000米液量ガロン=約90キロリットル)
 可燃性燃料を満載したタンクの前である。
さしものマサキもタバコに火を付けずに、口にくわえているばかりであった。
「次元連結システムを応用した装置で、一回の火炎放射で1500度の高温まで発射できる」
 マサキが説明した装置は、M2A1火炎放射器を10倍ほどの大きさにしたようなものだった。
色は黒に近い深緑色に染められ、戦術機の両腕で保持できるようにグリップが装備されていた。
「この棒型のグリップは手元に手繰り寄せるポンプ式で、連続30分の火炎放射が可能だ。
また燃料タンクの容量から30時間の使用が可能で、最悪の場合、戦術機の増槽としても使える」
 タンクには可燃性の燃料が満載している為であろう。
黒色の板に黄色の反射性の材料で、「危」と表示した標識が設置してあった。
「あと、真空ナパーム弾や、戦術機に装備する電子光線銃の開発も続けている。
これが完成すれば、BETAに近寄らずにハイヴごと奇麗に焼けて、跡地利用にも問題ない」
 そういいながら格納庫から出て、外にある自動販売機の前に移動する。
マサキは格納庫の扉が閉まったことを確認すると、胸ポケットから使い捨てライターを出した。
「どうせ人の住んでいない月面です。
いっその事、核ミサイルを使えば済むのではありませんか……」
「お前も、すこしばかり過激な事を言うようになったな……」
 いささか感傷的になったマサキに、美久も同調した。
胸がつまった。
「美久、お前はゴキブリやネズミを退治するのに家を爆破するのか……」
ポツリと漏らしたマサキの言葉だったが、美久には皮肉に聞こえた。
「違います……」
「いや、違うはずがない」
「違うと言ったら、違います」
 マサキは勝ち誇ったような笑みを浮かべると、マサキは煙草に火をつけた。
ホープのアメリカンブレンドの何とも言えない香りが、その場に広がる。
「核爆弾を使うということは、ゴキブリごときで家を爆破する様なものだ。
俺としては、後に得られる資源の為にBETAとその副産物であるG元素だけを焼くことにした」
 そういわれると、何も言い返せなかった。
確かに、核弾頭による飽和攻撃という自分の提案は月面の資源採掘を遅らせる原因になる。

 ……マサキさん。
 この世界に来てから、あなたは変わりましたね。
以前でしたら、きっとハイヴどころか、惑星ごと爆破していたでしょう。
だいぶ優しくなら
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